New

Necklace & Choker

2016.08.03

 

 

 

あっという間の8月突入だった。

この夏は暑さというよりも湿度にクラクラしながら制作に励んでいる。

 

 

lips rittai

 

 

 

夏は日が長いのでひとりサマータイム導入により、7時過ぎには制作に取り掛かり、エアコンのない作業場で大量の汗をかいて仕事がひと段落したら、シャワーを浴びてエアコンに切り替える。

 

この至福の時間。

大量の汗をかいただけ、最高に幸せを感じる。

 

しばらく読書の時間がかなり少なめだったが、夏は日が長いのでエアコンの効いた部屋で読書の時間がちょっぴり充実。

 

戦時中に書かれた

柳宗悦氏著   「手仕事の日本」

この本の中に手仕事についての素晴らしい表現と理解深まる文章がありましたので、引用させてもらいたいと思います。

 

手が機械と異なる点は、それがいつも直接心と繋がれていることであります。機械には心がありません。

これが手仕事に不思議な働きを起こさせる所以だと思います。

 

手はただ動くのではなく、いつも奥に心が控えていて、これがものを創らせたり、働きに悦びを与えたり、また道徳を守らせたりするのであります。

そうしてこれこそは品物に美しい性質を与える原因であると思われます。

 

 

なるほど。

私はこの仕事を始めてから、工業製品の食器をほとんど買わなくなった。というよりなんとなくそれを所有したいという気持ちがお金を払うという行為を経て手に入れようという気持ちより勝らなくなったといえばいいのだろうか。

どうしてなんだろう。

他人にうまく説明ができない。以前は、そんなこと考えもしなかったのに。

 

この本の中でこの表現に出会ったとき、スパーンと殻が割れたような気がした。

確かに自分自身が作る作業をしているとき、いつも心が寄り添う感覚で手が動いている。

無心になっているときもある。

手作りのものや手作業のものには出来上がったとき温度としてモノに温存されていて、手にするものがそれを汲み取るからなのかもしれない。

 

「用の美」を調査、収集した著者の素晴らしい表現に、ますます手仕事に関われるはしくれとして、励みと精進を誓った次第でした。

 

本日ご紹介は、

唇がテーマのリップスペンダント。でした。

話の内容と関係なくてあいすみません。

 

 

 

 

2016.06.23

 

 

 

 

 

昨日のまとまった雨で一気に梅雨な気分になったが、本日より今年上半期最後の個展のため、山口県へ。

山口県は福岡のお隣県とはいえ、伺うのはほぼ広島寄りだ。

 

P6150160

 

 

 

じめった気分を払拭するようなたくさんの出会いとワクワクがありますように!

とても明るく、人生を謳歌している方々の多いドログリーさんに集まるお客様方に1年ぶりにお会いできるのを楽しみに、今から新幹線に乗りたいと思います。

では、行って参ります!!

 

 

 

 

 

2016.06.04

 

 

 

先日、お客様、そして個人的にも交流のある方のご自宅にお伺いしたら、グレーのざくっとしたセーターに白い動きやすそうな細身のパンツで、お迎えして下さった。

ふわふわのショートカットの耳元からシンプルな細いピアスがのぞいていて、おいしい紅茶とお菓子をセットにして一人用のお盆に乗せてお出しして下さった手元には、大玉のパールのリングと重ね使いでリングをしていた。

 

P6020011

 

 

 

私が伺うことをお気遣い頂いたようで、どちらも私の作ったものを身に着けて下さっていた。

いつもお忙しい方で、きりっとしたファッションしか拝見したことがなかったのだが、ご自宅ということもあってか表情も柔和に見えた。

 

自宅にいるときも、少し装う意識を残して日常を過ごすことは、大切だな。と思った。

 

これから突入するうっとうしい雨の季節。

出かけるのもおっくうになってしまう。

この季節にはなんとなく予定も入れたくなくなり、ついゆるみがちなまるで構っていないような装いになる。

こういう時にこそ、パールのピアスや日常使いのできるペンダントがぐっと気持ちを上げてくれる。

 

そんなシーンでも積極的に選ばれるものを作ってみた。

 

迷子になったバレリーナシューズ。

な、ペンダント。単独使いでもそれなりの存在があり長さも50センチほどで、重ね使いにケンカしない程度のトップの大きさです。

ちょっと、女子なモチーフですよね。

どうやらそんなときも、ある。ようだ。

 

 

 

dolls pierce and pendant

 

 

 

 

休日中にふっとまとまったお人形の形をしたセミロングペンダント。

出来上がるとなかなか気に入った。ほどよく大ぶりでモチーフの題材にしては甘くない。

なんとも13ミリ強というパールが効いています。

 

doll p

 

 

揃いのモチーフでピアスを作ったら華やかな感じだろう。ということで翌日にはゆらゆらと大きく揺れるピアスも作ってみた。

 

 

P5040013

 

 

大ぶりで揺れるピアスは、旅先で見かけた思い出すシーンがある。

この仕事を本格的にやろうと心に決めて、まず訪れたのはミラノだった。

もう20年以上前になる。

 

その時、足を伸ばして訪れたのは避暑地イタリアのコモ湖。

船着場のバルでキリッキリッに冷えたスパイシービアンコを飲みながら船が着くのを待つことにした。

前方に賑やかなイタリア人3人組が盛り上がっている。

イタリア人はどこでも盛り上がっているし、できあがっている。

真実のほどはさておき、そのように見えるし、聞こえるのだ。

そばかすだらけのこんがりと焼けた女性が、素足に皮のサンダル、ワンピースというスタイルで大きなサングラスを頭にさして、陽気に2人の男性と身振り手振りで話していた。

絶え間ないおしゃべりの合間をぬって、レモンチェッロのオーダーもしっかり済ませていた。

 

女性の大胆に開いた胸元にはノーアクセサリー。

焼けた素肌に星空のようなそばかすが、不思議と素敵に見えた瞬間だった。美白美白と日本では冬さながらの紫外線対策。ヨーロッパでは日傘なんて売ってもないし、さしてる人もいない。たまに見かけるのは、日本人観光客だった。

新しい美観を発見した。

そして、耳たぶがちぎれんばかりのゆらゆらと揺れる大ぶりなピアスと、グラスを持ち上げる手元には大きなバングル。

 

こんな女性像が、自分の作るアクセサリーのミューズだ。

 

私の中に鐘が轟いた。

 

それから15年後、今より6年前。再びミラノを訪れてみた。

しかし、鐘の音は聞こえなかった。そして、スイスジュネーブへと足を伸ばし、鐘の音が鳴り響くのを聞いた。

旅では、そういう自分と向き合う時間。少しずつ変化していく自分と対峙する時間。

その後、私の旅は、オランダ、ベルギー、ドイツへと鐘の音を求めたジプシー型だ。

というわけで、来週からしばらくぶりのバカンスも兼ねた旅へ出ますので、ブログはお休みです。

今回はオーストリア。ヨーロッパでも最も多くの国に隣接しているオーストリアは、ジプシー型の私にはたまらない。時間が許せばブダペストへ。

私の中に新しい鐘の音が鳴り響かんことを願って。

 

 

 

 

2016.04.04

 

 

濃密な3月が終わり、瞬く間に4月になった。

桜の花びらが散り、やわらかな緑へと衣替えをしている。

アスファルトの脇にはこの時期だけできる桃色の細い道があちこちにある。

 

reihoku2

 

 

 

今週で佐賀展の準備も大詰めだ。

毎回、ほぼ売り切ってしまう、REIHOKUシリーズ。

石ころの同じ色と形がふたつとないことが、皆さんにとっても魅力のようだ。

佐賀展のために準備したものは、ピンク紫のパールとグレーパールを使ったシックなコンビネーションにまとめました。

 

 

以前、オーストラリアシドニーの郊外で活動をされていた、帽子の造形作家の方が来日された折に、私も仕事があったので東京でお会いすることになった。ご自身のユニークでアートな帽子だけでも麻布の待ち合わせでひときわ目立っていたが、ワンピースに個性的な形状のペンダントをされていたのにも私の視線は釘付けだった。

 

聞けば日課となっているビーチでの散歩中に、とても面白い形で美しい大きな貝殻の一部を拾ったらしい。

長い時間をかけて波の力で角が研磨されて、生まれたシルエット。

眺めてはしまい、取り出してはしまいを繰り返していたが、ずっと身につけていたいと思い立ち、友人の彫金作家に少しだけ施しをしてもらいペンダントにしたものだと話してくれた。

 

貴石や半貴石もよいが、自分もそういうものに魅力を感じ、人間が生み出すことのできない時間の圧力でできる自然美の力を借りた作品を作りたいという話でしばし盛り上がった。

 

帰国後作家さんから国際便で小包が届いた。

 

あなたがきっと喜びそうなものを森で見つけたから贈るわ。

 

短い手紙が添えられていた。

 

開けると、見たこともない大きな木の実だった。

まるでなめした革のように艶があり、形も愛嬌のあるおまんじゅうのような形だった。

ひとつひとつ形が違うバンヤナッツという木の実だということだった。

 

その木の実をベースにして紐スタイルのざっくりしたペンダントに仕立て、お礼にまたオーストラリアへと送りかえした。

そのペンダントをつけて出かけると現地の友人たちや、ショップを営んでる方々が、それがいつも季節になると落ちている見慣れたバンヤナッツのペンダントだと分かると、欲しいという声があがったらしい。

でも、やんわりとかわす返事に留めておいたといういきさつのメールしてくださった。

 

大量生産をしていない我々のような仕事は、安定して供給できないことが大きなビジネスになり得ない最大の難である一方、それこそが最大の武器であり付加価値にもなり得る。

 

資材の安定調達。確保ができてこそのビジネスだ。

ビジネスと制作活動は違う。

長年のキャリアのある作家さんの冷静で賢明な心使いが、内心有難かった。それでも、言語の違う方々が反応してくださったことは、とても嬉しかった。

 

そんなわけで過去にも木の実を使ったシリーズ、木を使ったシリーズ、などを売り切りで展開したことがあった。

 

このREIHOKUシリーズも売り切りの展開の自然美の力を借りたアクセサリーのひとつである。

 

自分の中でそんな素材との出会いがあった時にだけ出現する。

それをご理解頂き、お買い上げいただく方々に直接会ってお話できることが、ただただ嬉しいのです。

 

佐賀展でもお会いできたら幸せです!

 

石ころたちも、きっと幸せだと思うな。

 

 

 

 

 

 

 

Page top

Instagram