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Necklace & Choker

2016.02.28

プリンス&プリンセス

 

 

今年から少しずつ、時間をかけた作品を紹介していこうと思っている。長いお付き合いのクライアントの方にも、いろんな意味でご協力を得ながらの長期的な取り組みをしてみたいと、勇気を出してお話してみた。

 

sqpearl

 

 

もう三年ほどくすぶっていた。

ご理解ある方々の応援のうえに了解いただいた。

信頼してくださったことへの感謝のひとことに尽きる。

気持ちが少し軽くなった。

と、同時に心地よい前向きな責任を感じた。

口に出すということは、最低でも実行しなければならない。今の自分から前に進むためには、まず今の自分を知ることが必須。

 

時代の変移というものをあらゆる分野で感じ取るような年齢になってきた。その変遷のなかで、自分自身が切り替えられる範疇のものは、受け入れ変化するよう努める。それでもどうしても苦手なことや受け入れられず、違和感を強烈に感じるものがある。その部分とどう向き合うか。

このことを何度も突き付けられてきた。

昨今の経済ニュースでも周知だが、同じやり方で半永久的に繁栄し続けることは、なかなかに難しいスピードの時代だ。なにしろ商品価値に加えて価値観そのものが大きくシフトしてきている時代の渦中にある。しかし、こんな時であるからこそ各々が変えてはならない自分なりの信念や精神美学のようなものを、強くもつべきではないかと思う。

自力で立つことができなくなっても、助けを得られる規模やステイタスのあるものは内情は別として形としては幸運だ。

では、自分のようなものが窮地に立たされたとき、果たしてどうなのか。

朽ちない精神美学を自分の中に持つとき、最も幸運を感じるのではないだろうか。

何かを得るために何かを捨てなければならないという考え方ではなく、何かを決意選択することで、バランスをかじ取りし、自分自身の中にスペースを得る。

 

そんな考え方が自分らしいように思えてきた。

働くことの目的意識。これは、時間の経過とともに案外ないがしろにされがちだ。

 

少し、立ち止まって自分の今を探ろうと思っているところだ。

 

sq pearl2

 

まずは、今の自分。ここからスタートだ。

という一作目となった、プリンセスチョーカー。

下がりパール取り外せますのよね。

 

なんだか個人的な固い話になってしまいました。

 

対の作品、プリンスチョーカーを次回ご紹介したいと思います!

 

 

 

2016.02.16

コインパール

 

 

この仕事をしていると、生業としてものを作っている方々にお会いすることが多い。

そうなると必然的に魅力的なものに沢山出会う。

気がつけば、食器棚には20年ほどかけて集めた作家さんの作品たちが思い出とともにひしめき合っている。

それだからか洗い物の途中で、派手に器を割るということは殆どない。うっかり縁が欠けたりしても、研磨したり、接着したりして使い続けている。

 

 

coin choker2

 

 

 

クリエイター同士がお互いの作品が気に入った場合は、物々交換という形で支払いを精算することが常である。

このシステムはお金でやりとりするよりも独特の満足感と喜びでいっぱいになる。

お金で買うよりも二重の喜びが得られるような気がするのだ。

先方もきっと似たような気持ちなのだろうと思うことが度々ある。なぜなら上がったテンションがこちらにも伝播してくるのを感じるから。

 

 

いつもの私の買い物スタイルはこんな感じだ。

もしも自分にとって魅力的でそばに置きたいと思うものに出会ったとき、なんとなく値段を予想してみる。その後、初めて値段を記してあるタグを見る。物価としての値段は自分が支払えるかどうかという個人的な数値でしかない。

そうすると、ほんとうに必要なのか欲しいのか、という隙間な目線が自分に冷静さを与えてくれる気がする。

 

ただ、作家さんとの物々交換のお買い物は、このお買い物スタイルとは別なものだ。

何しろ、それを作ったご本人に会えているということに加え、同じ作ることを生業としているという意味においても時間的な共有をしているような気持ちになり、深い満足感を得られるように思う。

 

お金で買えるものには、ときにお金で買えないものがくっついてくることがある。

 

それが商品を通して生まれる縁というものではないだろうか。

円を使って縁を得る。

 

円が発生しないお買い物スタイル、物々交換。

クリエイターたちは、わらしべ長者的お買い物を楽しんでいるのです。ふふふ。

 

 

本日は、コインパールを使ったシンプルチョーカーのご紹介でした。

 

 

 

 

 

2016.02.11

バロックスタイル

 

 

このバロックパールを初めて目にしたときは、思わず声が出た。

驚いた。

大きさ。照り。肉厚でフォルムも奇麗。

裏も表もないほどに美しかった。

 

big barouque

 

 

このボリューム感だから、一歩間違うとこんなにバランスのよい自然美という価値を、下品なランクに一気に落とし兼ねない。生かすも殺すもデザイン次第かと思うと、素材に試されているようで、形にすることにそれなりの決意が必要だった。

 

制作の過程で、今回のように素材に試されていると感じることは多々ある。

出したいシャープさやなめらかさ、柔らかさ、銀であるならば表現が可能であると知っているのに、それがうまくまとめられないときのもどかしさ。

力量を淡々と突き付けられる瞬間だ。

少しくらい続けてきたからと言って、慢心してはならない。

素材に叱責されているようで、厳粛な気持ちになるものだ。

 

首元からデコルテへと優しく包むようなラインの先端に、銀色のヘタが溶けかけて絡みついている。

大きなバロックパールがどのあたりにおさまれば、身に着けたときしっくりとくるか。

人が身に着けてこそアクセサリーだ。

着ける人ご自身よりも奇抜なデザインだけが先行したり、素材だけが前に出るようでは、私が作りたいアクセサリー観に反することになる。

その落としどころで、形になるまで一年を要したというわけだ。

 

バロックパールが顔と少し離れ、優しく流れるイメージの線で視線を誘導し、女性の胸元にちょうど収まるよう配したので、バロックパールの大きさが主張しすぎて、嫌みな感じが表に出ることがないように気を配ったデザインにした。つもり。

 

どんな方に嫁ぐのかが個人的にとても気になるアクセサリーのひとつとなりました。

 

それだけ気を配ったというバロックパール、いったいどのくらい大きいのか。

ものさしを眺めて想像してみてください。

縦が4センチほど、横が3センチで、厚みが2センチほどある。

ね。

思わず声が出る大きさでしょ。

 

バロックパールの前留めスタイルチョーカー。

 

 

2016.01.20

夜遊びブルームーン

 

 

作品タイトルを決めるのは、私の中では小さな楽しみごとのひとつである。

 

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どことなく記憶にある方がいらっしゃるかもしれないが、これは、昨年ご紹介したブルームーンハウスペンダントのアレンジ版。

昨年福岡個展にお見えなられた長いお付き合いのお客様が、40歳の記念に自分にプレゼントしたいとのことでした。

選ばれたのはブルームーンハウスペンダント。

ブルームーンの場所を少し変更しアレンジ版でオーダーされました。

 

おうちから落っこちそうな感じが希望ということで、月の場所や全体的なバランスはお任せ頂いた。

出来上がりを知らせてから、取りにお見えになるまでの数日間、仕事から帰るとき夜空に月を見つける度に、私のブルームーンにもうすぐ会える!とドッキドキでしたあ。

そんなことをにこやかに語りながら、包みを開けるOさん。

「ああ、ドキドキする。ドキドキする。ドキドキするう。」

私も毎回、納品時はドキドキなんですよね。

「私も、ドキドキする。ドキドキするう。」と、一緒に合唱してました。

 

 

夜遊びしてほろ酔い気分で帰宅したブルームーン。

おっとっと!落っこちるところだったよ。

 

出来上がったらそんな絵が浮かんだ。

 

たまにはハメ外すことも大切。

40代はとてもよい年代だと思う。

新しい自分を発見する絶好の10年のように思える。

次にやってくる50代を楽しむために、様々な素材を自分のポケットに詰めながら、気持ちを楽に持って日々を愉しむこと。

 

今なら、かつて40を迎えた自分にそう言えるなあ。

きっと10年後もハッピーだよ。Oさん!

お誕生日おめでとう!

素敵な1年を。

 

 

 

 

2016.01.14

幸福な朝

 

曇りの日々が続いている。

冬の空の白い雲から透ける太陽。

 

作業場で仕事を始めて1時間ほど、制作モードが加速してくる時間帯だ。

ビルとビルの間をゆっくりと進みながら、白く暖かい色した太陽の光がふんわりと作業場にいる私の全身を包んでくれる。

 

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

 

冬のこの時間帯は、例えようのない幸福感を味わうことができる。

 

冬空になると決まって思いだす朝食がある。

 

ストックホルムで滞在したホテルでの朝食だ。

レストランは外と部屋の境界線が感じられないほどの大きなガラスがはめこんであった。外は白樺の木立で、風にこすれる葉っぱの音が聞こえ、鳥たちが朝食をついばんでいる様子もよく見えた。

 

レストランには大きな暖炉があり、その前にはふかふかの心地のよい一人掛けのソファや、テーブル席、カウンター席、一人席、滞在しているいろんな人々が好きな場所で、新聞を広げながら、家族と団らんしながら、朝食を楽しんでいた。

 

メニューはシンプルな朝食の定番メニューのビュッフェ。

とりわけ、気に入ったのが卵メニューだった。

ボイルドエッグに関して、ゆで加減が4分、6分、8分、10分、12分と小刻みに分けてあり、15分という固ゆでのものまでがそれぞれかわいらしいかごに盛ってあった。

 

ここまでの細かさで用意してくれているホテルに、今まで宿泊したことがなかったので、とても印象的だった。

そのほかの卵メニューが、

スクランブルエッグ。

オムレツ。

ポーチドエッグ。

サニーサイドアップ。

なんだか、とても幸せな気持ちになったことを思い出す。

白樺の木立に射す太陽。

朝の冷たい空気がじんわりと温まり、朝陽を含んだ白い空気が、ゆったりと木立の中を流れてゆく光景を、暖かい部屋で暖かい朝ごはんとともにテーブル越しに眺める。

 

そのとき感じた幸福感が、この時期の朝の太陽が私を包むように射す時間帯にいつもよみがえる。

 

みなさんもそれぞれに、幸福な朝の記憶をお持ちでしょう。

 

 

というわけで本日は、サニーサイドアップ。

目玉焼きなリングとペンダントのご紹介でした。

 

 

 

 

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