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2017.05.12

価格をつけられない情報

 

 

 

渦巻く情報。

真に望む情報とは、誰もが共有出来る無料のものの中には存在しない。

リビングに居ながらにして、指や目を動かすたやすい方法で得られる情報に、稀少な価値ある情報は皆無に等しい。

そう思っている。

これは、個人的な実体験にもとづく、あくまでも個人的な考えである。

 

 

 

 

この仕事を始めた頃とほぼ同時期にパソコンが一般家庭に普及し始め、検索エンジンがこんなに便利なのかと世の中が一気に近く感じたような気がした。

私は、その頃どうしても欲しい彫金資材が国内で手に入れられず、毎年少ない仕入れ資金を持って、勉強も兼ねて海外のあちこちを訪れ仕入れをしていた。

ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、パリ、ロンドン、ミラノ、バルセロナ、フィレンツェ、プラハ、ストックホルム、コペンハーゲン、アムステルダム、バンコク…あちこち行った。

 

現地に住んでいる方で現地のことはなんでもお聞きください。そんな方にも唐突にもメールしたり、あらゆる検索方法で資材屋を探しまくった。

しかし、そうやって揃えた情報の店に行っても望むものの仕入れはできなかった。

それでも、帰国時には必ず実りある仕入れが出来て満足して戻り、翌年は別な都市へと仕入れに出かけていく。

それを繰り返していた。

とりあえず用意していった情報が、自分にとって不向きであると分かると、その瞬間から地図を片手にとにかく街を歩き回るのだ。

 

滞在日数は限られているので、エリアごとに大きく分けて毎日歩き回る。

そうやって動き回ることで、すれ違う人たちのファッションや飲食店に入っている人たちの様子、雰囲気などでそこはどんな人たちが住みどんな店が集中しているのかが掴めてくる。

慣れてくると、初めて訪れる街でもそこが自分にとって時間をとって歩き回る必要があるかどうかが、カンが働くようになる。

現地の感度のいい人たちの話題のスポットも掴めてくる。

 

そうやってたどり着いたお店で買い物を済ませてから尋ねたり、場合によっては自分が身につけているアクセサリーに興味を持ってくださって会話がはずみ、教えて貰う情報でたどり着くこともあった。

 

ある時、はっきり気づいた。

 

自分が本当に欲しい情報は、自分の足で稼がなきゃいけないんだ!

情報はタダではないんだ!

実際にそこへ出向き、見て、誰かと会い、話し、そこに身を置くことで感じる。そのことは、情報のふるい分けの判断力を鍛えてくれる。

 

毎回、その思いは強くなり、今では自分の信念になっている。

と同時に、簡単に情報を得ようとしていた若い頃の自分を恥じた。

 

それだから、経験や実体験に基づいた貴重な情報を教えてくださった方には、きちんとお礼の言葉を伝えるようにしている。

 

検索して得られる情報は、ある種広告意図も含まれたもの。

なので無料だ。

しかし、専門の方が持つ情報は、無料ではない。

その方のお金と時間、肉体が使われ、実体験と知識、教養、全ての元に成り立って判断された貴重なものだ。

価格がつけられない重みがある。

 

 

どんなにスピーディーな時代へと進化しても、

たやすく得られる情報との適度な距離感を持ち、支配されることなく生きようと思う。

 

自分のアンテナが反応する。

とにかく実際にそこへ行ってみよう。

現物を見て、触ってみよう。

早速やってみよう。

それから、判断しよう。

 

それが、これまでの仕入れの旅を通して自分なりに得た、自分の生き方の軸になっている。

ちょっと大げさだけど。ね。

 

それでも私にとっては、自分なりにお金と時間をかけて得た確かな自分軸なのです。

 

 

 

 

2017.05.07

一期一会

 

 

一期一会。

それは、人と人だけではない。

 

 

 

大型連休。

カレンダーをおよそ無視した日々を過ごしていたが、1日だけ終日オフとしカメラハイクに出かけた。

場所は玄海町の棚田。

ここは、棚田百景に選べれているという。

九州在住なのに、知らなかった。

昼過ぎに到着すると、既に全国から集まった人々の立派な三脚がずらっと並んでいた。

花見の場所取りの如く、三脚だけがセットされカメラを持った人は案外少なく、スマホ客が目立っていた。

夕刻になると、車はざっと200台ほどに増えて立派な三脚に相当するカメラを抱えた人たちが、どこからともなく続々とやってきた。

全体正面からのアングルは諦めて、下見の段階で決めていた少し離れた奥地の場所へと移動した。

そこには、キャンピングカーで旅行中の奈良県在住のご夫婦が2人だけだった。

九州の撮影スポットをあちこち堪能しこの棚田が最後の締めくくりで明日帰るのだという。

ご夫婦の趣味、カメラ好きが高じてキャンピングカーを買ったのだとか。

県の優秀賞を何度か取られたという奥様は、カメラ2台を操っていた。

 

棚田は、田植えが終わった5月頭、しかも少し経ってからが土が落ち着き水が澄んでくる、その短い絶妙な期間が一番美しいらしい。

それが九州ではゴールデンウィークにかぶるという。なるほどどうりで全国からやってくるわけだ。

しかも、ここは棚田の奥が海でその水平線に太陽が沈む。こんな地形はなかなかない、おまけに今年は、天気に恵まれそうだから九州に行こうと決めたんです。

人懐っこい関西訛りの発音で、いろんな話を聞かせてくださった。

今日は、相当綺麗だと思うよ。

昨日も熊本で最高の写真が撮れたらしく興奮気味な様子だった。

 

私たちは、雲に隠れた太陽が顔を出し、水平線へと落ちるのをじっと待った。

 

 

 

どのくらい待っただろうか。

雲から覗いた太陽は、音もなく光の手を伸ばし海から棚田、私たちの身体までも黄金色に、そしてオレンジ色に染める。

その刻一刻と変わる棚田の水面の色と広がる海の色の美しさは、たちまち全員を無口にさせた。

 

シャッター音だけが鳴り響く。

 

オレンジ色の刻が、茜色へと極まった頃、思わずため息が出た。

 

世界が変わるでしょう。

 

奥様が、静かに私たちに話しかけた。

 

ほんとに。

美しいものを目前にすると、心は空になり感情さえもなくなる。

何かに包まれるような温かさだけが身体中に広がり、思わず泪が滲み出てくる。

 

この時間、名前も知らないご夫婦と、そして、2度と同じにして見ることができない景色。

 

私たちは、そんな場所の一部にいて生きている。

今日出会った人に、一期一会。

今日見た景色に、一期一会。

そして、今日という時間に、一期一会。

 

 

そんな、一期一会にたくさん出会うために、

もっと、カメラ学ばなきゃ。

 

 

 

 

2017.04.29

もうひとりの私

 

 

しっとりとした絹の温もりが微かな音と共に、全身を滑りおちてゆく。

うっとりするような心地が身を包む。

 

 

 

 

試着室を出た。

お店で借りたヒールを履いて、全身鏡に映ったもうひとりの私を見る。

 

ハンガーに吊られているのを見た瞬間、なんて美しいワンピースなんだろう、そう思ったので試着させて貰ったのだ。

 

品のいい絶妙な丈、女性の肌が見える部分が巧みに計算されたいやらしさのないカット、素材は全て絹。

袖、カフ、身ごろ、黒い絹の3種類の違った質感を最大限に生かした部位に使用し、シンプルでありながら粋さも兼ね備えた、気品あるデザイン。

素材を知り尽くし、且つ縫製技術が長けていないと完成されないだろう。

絹はあるがままの体の線をダイレクトに出してしまうという、女性にとっては(少なくとも私は)あまり嬉しくないデメリットに関しても、きっちり対応してあった。

 

エレガントとはこういう服をいうのだろう。

こんな服を着ると、自分が全く別な人間に生まれ変わったような気持ちになる。

 

そのワンピースは、GIVENCHYだった。

 

こんな気持ちになれる服が存在することがとても嬉しかった。

 

有難いことにサイズが自分には適切でなかったので、試着室で安堵した。

ファッション史の記事で読んだことがあった。

GIVENCHYの服は、分解すると世界中のパターンナーがその美しさにため息をこぼす・・・と。

 

誰かの身を包むことが前提の服だが、飾られている時から人の気持ちを引きつけ、着ることで女性に魔法をかける、まさにドレスだ。

そして更には分解するとプロ達を唸らせる。

 

素晴らしい、非の打ちどころのない仕事。

この一枚の服に携わった方々はいったいどんな人達なのだろう。

 

創り出すことは、ロマンと情熱に満ちている。

そして、それらはそれを見た人に必ずや伝播する。

そのことを含めて体感できるということは、店舗に出かけることでしか味わえない。

デザイナーや職人達は常に、顔の見えない私たちにもうひとつの言語で語りかけている。

 

家路につく途中、

まるでそのドレスワンピースを手に入れたような満足感がひたひたとこみあげてきた。

女性に生まれてよかった。

 

 

 

2017.04.21

置かれた場所

 

 

ささやかながら、ここで頑張っています。

 

 

 

 

そんな声が聞こえてきたので、思わずカメラを向けた。

君を応援するよ!

 

こぼれ種で生まれた命は、公園の木のテーブルの朽ちかけた裂け目に居場所を構えた。

モノクロでも撮影してみた。

 

 

不思議なもので、モノクロだと、こんな奇異な場所に生まれて将来が不安です。そんな声が聞こえてきそうだ。

 

どちらもなかなか好きだ。

もうひとこと聞こえた。

 

置かれた場所で咲きなさい。

 

とは、このことだね。

環境のせいにしてはならない。

環境を楽しむ心の余裕が幸福感を千倍にする。

 

駆け出しの頃、私には言葉でこそは聞こえなかったが、このアクセサリー気に入った、君を応援するつもりで買うよ。

きっと沢山のお客様方が、そう心の中でつぶやいたであろう。

今でもそうかもしれない。

頂いた応援は、作品作りを続けることでお返しをすること。

常にそういう風に思っている。

 

産まれたての候のあらゆることを記憶から消さないように、置かれた場所で今日もささやかながら頑張っています…

 

 

 

2017.04.14

間仕切りスト

 

 

友人たちに、自称、間仕切りストと名乗っている。

それくらい四六時中あちこちをちまちま整理、収納やっている。

とはいえ、ケッペキショウでは決してない。

私ってちょっと変かな?と思っていたが、案外こんな人いらっしゃるようで、ちょっとホッとします。

先週は、梅雨のような天気が続いたので、香りグッズの収納箱の中を更に小分け収納、分類を済ませひとり悦に入っていた。

 

アロマ小瓶とクリーム用ケースのスペアたち

 

日頃から使えそうなサイズの空き箱を溜め込んでおき、出番がきたら紙や布で中敷きしたり、蓋に貼りこんだりして収納したいものに合わせて、桐板で間仕切りを作る。

パズルをやっているようで、結構夢中になる。

殆ど子供?

 

お香と香立てたち。

 

ぴったり収納されて一目瞭然の状態になると、スカッと気持ちよい!

 

卓上キャンドルスペアたち。

 

 

友人に贈ったオリジナルブレンドアロマキット、贈り物らしくなった?!

 

 

眼鏡の入っていたケースに間仕切り作ったら、大正時代の九谷豆皿がジャストフィット!

 

 

モノの居場所がきちんと決まると、モノがにこにこしているように見えて幸せな気持ちになる。

ま、こちらが勝手にそう見ているだけだろうが。

それでも、気持ちの良いものです。

 

 

 

 

 

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