2017.05.07
一期一会
一期一会。
それは、人と人だけではない。
大型連休。
カレンダーをおよそ無視した日々を過ごしていたが、1日だけ終日オフとしカメラハイクに出かけた。
場所は玄海町の棚田。
ここは、棚田百景に選べれているという。
九州在住なのに、知らなかった。
昼過ぎに到着すると、既に全国から集まった人々の立派な三脚がずらっと並んでいた。
花見の場所取りの如く、三脚だけがセットされカメラを持った人は案外少なく、スマホ客が目立っていた。
夕刻になると、車はざっと200台ほどに増えて立派な三脚に相当するカメラを抱えた人たちが、どこからともなく続々とやってきた。
全体正面からのアングルは諦めて、下見の段階で決めていた少し離れた奥地の場所へと移動した。
そこには、キャンピングカーで旅行中の奈良県在住のご夫婦が2人だけだった。
九州の撮影スポットをあちこち堪能しこの棚田が最後の締めくくりで明日帰るのだという。
ご夫婦の趣味、カメラ好きが高じてキャンピングカーを買ったのだとか。
県の優秀賞を何度か取られたという奥様は、カメラ2台を操っていた。
棚田は、田植えが終わった5月頭、しかも少し経ってからが土が落ち着き水が澄んでくる、その短い絶妙な期間が一番美しいらしい。
それが九州ではゴールデンウィークにかぶるという。なるほどどうりで全国からやってくるわけだ。
しかも、ここは棚田の奥が海でその水平線に太陽が沈む。こんな地形はなかなかない、おまけに今年は、天気に恵まれそうだから九州に行こうと決めたんです。
人懐っこい関西訛りの発音で、いろんな話を聞かせてくださった。
今日は、相当綺麗だと思うよ。
昨日も熊本で最高の写真が撮れたらしく興奮気味な様子だった。
私たちは、雲に隠れた太陽が顔を出し、水平線へと落ちるのをじっと待った。
どのくらい待っただろうか。
雲から覗いた太陽は、音もなく光の手を伸ばし海から棚田、私たちの身体までも黄金色に、そしてオレンジ色に染める。
その刻一刻と変わる棚田の水面の色と広がる海の色の美しさは、たちまち全員を無口にさせた。
シャッター音だけが鳴り響く。
オレンジ色の刻が、茜色へと極まった頃、思わずため息が出た。
世界が変わるでしょう。
奥様が、静かに私たちに話しかけた。
ほんとに。
美しいものを目前にすると、心は空になり感情さえもなくなる。
何かに包まれるような温かさだけが身体中に広がり、思わず泪が滲み出てくる。
この時間、名前も知らないご夫婦と、そして、2度と同じにして見ることができない景色。
私たちは、そんな場所の一部にいて生きている。
今日出会った人に、一期一会。
今日見た景色に、一期一会。
そして、今日という時間に、一期一会。
そんな、一期一会にたくさん出会うために、
もっと、カメラ学ばなきゃ。