2018.11.11
登山の世界
本は読んだら手元に置いておきたいと思うもの以外は、好みそうな友人や知人に譲るか売却している。
しかし、本を開くとどこで生まれたのかちっちゃなちっちゃな謎の本の虫?が現れる程、薄汚れてしまっていてもどうしても手放す気になれないのが山岳小説たちだ。
あの苦しさを味わおうとする人間が知る独特の世界観は、実に魅力的に思えてならなかった。
ずっと心の端の方に潜り込んだまま、扉は開かない。
そんな囲われた登山の魅力は、小説を読み進める時に開くもので、実生活とはどこか無縁であると思っていた。
先月のこと。
天災の多い昨今、九州も今年は雨や台風の被害が多かった。
避難用のためのリュックをひとつ買っておこうと思い、登山店に出向いたら、そこには山岳小説で馴染みのある道具やウエアがびっしり並んでいた。
自分の体験していない世界を知っている人たちがこんなにいるのだ。
しかも、福岡の中心地にもあちこち専門店がある。
これだけの市場があり、需要があるということ。
まずそのことに心が浮き立った。
ザックを背負った自分を鏡越しに見た。
よし!登ろう!
始めよう!!
突如、扉が開いた。
そして、5年前に山を始めた山先輩に頼み込み、トレッキングシューズを新調し山デビューを先週果たした。
めっぽう楽しかった。
初回は、ハイキングレベル。
明日はお天気良さそうだね。水かお茶を持ってきてね。
前日に届いた山先輩からのメール。
当日は、これ以上にない絶好の山日和。
山先輩が温かいお茶、行動食の甘いもの、おむすびや果物、すべて準備して下さっていた。
山を始めた時に、自分も山先輩にして貰ったのよ。
だから初めての人と登る時には、いつも2人分用意するようにしてるの。
にこにこしながら青空の下で手早く広げたおむすびランチのおいしかったこと。
格別だった。
そして、本日。
仕事を早めに片付けて、先週登った山を復習のつもりで今度はカメラ片手にひとりで登ってみた。
ファッションだと思い込んでいたものにも、全て意味があるのだと気づくことが多々あった。
ザックひとつにしても、両手をフリーにしてスマホをする為のタウンリュックとは全然仕様が異なっている。
身体感覚の個人差。
登るペース。
選ぶ道、コース。
見える景色。
楽しみ方はそれぞれだ。
私は、今日、光を沢山感じることができた。
光が当たる場所と当たらない場所。
陰影コントラストが、カメラの露出をいじらなくてもただシャッターを押すだけでこんなにナチュラルに撮影できることに、ときめいた。
街中では感じることのできない、いや見ることのできない光の世界だ。
今回、山先輩にして貰ったことへの感謝の印として、いつか初めて山を登る方と一緒になることがあれば、自分がして貰ったことを同じようにしてその方に回そうと思った。
それが、山を始める礼儀なのではないかと思った。
月末は、縦走にチャレンジの予定。
次は、何を感じることができるか今から楽しみだ。