2017.03.30
メイドインジャパン
焙煎屋さんの美味しいコーヒー豆と出会い、久しぶりにハンドドリップコーヒーを飲みたくなった。
フレンチプレスで愛飲している我が家には、ハンドドリッパーそのものがない。
心地よい春の陽射しに誘われ、この頃よく見かける一杯だてのものを探しに出かけた。
まず、品揃えの豊富なキッチングッズを売っている大型店へ。
そのあと、よく行く焙煎屋さんに立ち寄ってみた。
そこに、大型店で見た同じメーカーの同じ陶器製で明らかに違うものがあった。
聞けば波佐見焼のものだと言う。
どうりで、青みがかった清潔感のある白はとても気品があり美しかった。
同じメーカーのロゴマークが入っているのに、佇まいが違う。
紛れもなく気を発していた。
そもそも日本生産をしていたのだが、量販の流れにおされ母国生産でなくなってしまっていたらしい。
しかし、ここにきてメイドインジャパンであろうと、技術の確かな波佐見焼に依頼しているラインである、と店主が訥々と語ってくれた。
量販店で見たものの倍の金額だった。
迷わず買って帰宅。
豆を挽き、お湯が沸く間、店主が少しだけ違いを話してくれた部分をしげしげと眺め入った。
コーヒーが抽出されて落ちてゆく3つの穴の大きさの緻密さ、ペーパーがセットされる部分の内面の溝の彫りの深さと均一さ、縁の太さと細工。
なるほど、量販店で見たものとあちこちが違う。
この違いが、気を発していたのだ。
そして、本体の裏を見た途端思い出した。
何かの本で読んだのだが、海外赴任した著者が当時よく聞かされたという話だ。
トヨタの車のバンパーを外すと、裏までそれがまるで表であるかのように磨いてあり、異国の車メーカーがとても驚いた。という。
伝統芸と技術。
何よりもモノつくりというスピリッツ。
何に時間とお金を使うか、文字どうり自由な時代だ。
うんざりするほどモノも溢れている。
選び放題だ。
今日、自分が量販のものより倍の価格を払いこれを選んだように、誰かが自分の作ったモノを選んで下さるような仕事をしなければ。
波佐見焼のハンドドリッパー。
九州人として、
且つ、モノつくりの端くれとして、とても力強いメッセージを送って貰ったように感じ、実に美味なる趣深い一杯のコーヒーとなった。