2017.03.24
愛着のある街
博多湾。
関東方面から福岡への飛行機は、この湾の上空を飛んでゆく。
福岡のキーウエスト。志賀島へと続く両サイドを海に挟まれた一本道を超え、機体が大きく傾き着陸態勢となる。
博多湾に反射する夕刻の水面を上空から眺めるのが、なかなか好きだ。
飛行機席はいつもアイルシートをリクエストするが、帰り便は決まって窓側の席に座り、この辺りの上空に近づくとipodでお気に入りの曲を選曲し、小さな窓に額をぴったりくっつけて眺め入る。
今はこの湾の一部は埋め立てられ人工島となり、高層マンションが続々と建ち上がり都市計画が進められている。大きな病院も移転した。
街は進化し、装いを変えてゆく。
かつてこの湾の一部には蒙古軍も攻めてきた、千利休も訪れた。
この頃では、タイタニック号よろしく異国の豪華客船が定期的に停泊している。
就職のために越してきて初めて福岡に住んだのは、博多湾が見下ろせる東区のマンション、会社の寮だった。
この街での生活がもう30年近くが経とうとしている。
到着した空港では、あちこちで博多弁が飛び交う。
どこ行ったと?
こっちは、天気悪かったばい。
車、あっちに止めとうけん。
疲れたやろ?
すれ違いざまの博多弁に思わず緊張が解け、誰にともなくつぶやく。
ただいま。
マイホームタウン。
長年住むと、装いや景色が変わっても愛着がこびりつくものだ。