2021.03.30
「薄氷」という名の銘菓
桜もほぼ散りつつありますが、連日の黄砂の影響で真っ白の福岡です。
3月も残る所あと1日。
次回の北九州の5月予定でした2人展は、11月に延期になりました。
というわけで次の個展は、6月の鹿児島個展です。
気持ちを切り替える前にいっぷく。
いっぷくにまつわるお話。
和菓子の世界は、四季を愛でる心とそれを表す削ぎ落とされた形や色、そしてさらには和菓子職人の句や詠心といいましょうか、菓子の横に静かに添えられた書で記された菓銘を見て、更に、奥深く見えてくる世界が広がる。
食すと滋味深い、和ならではの余韻。
和菓子は、ただの菓子ではなく、日本人の心が詰まった五感を満たす贅沢な食なのだと思う。
この小さな菓子の世界に詰まった世界に、年齢を重ねるごとにますます魅力を感じるようになりました。
まあ、偉そうなことをわかった口して並べておりますが、その実、作法も知らずにここまできてしまいました。
それでも、この和菓子の削ぎ落とされた世界は、実は私の制作においても学ぶことが多く、老舗の上生菓子を扱うお店の前を通る時には、たとえその時間が午後であり売り切れていることが予測されていても、必ず本日の上生菓子のケースを覗きに店内に入る。
今年初めての登山は、山頂の凍った池の上を歩くという人生初体験をしました。
少し前のブログやインスタで写真をアップしたところ、いろんな方からコメントを頂きました。
それは、とてもとても美しく、近く作品にしようと思っているところであるのだが、昨日、偶然にもこの凍った池を和菓子にしている銘菓を見つけました。
富山県の五郎丸屋の「薄氷」。
箱の中は、ふかふかの脱脂綿がまず被されていて、そして薄紙、それらをそっと剥がすと、まさしく薄氷さながらの姿で並べられておりました。
おお、くじゅう御池の凍った姿と同じではないか。
全国の和菓子を名器と共に365日で紹介している「一日一菓」という写真集の中にも掲載されておりました。
食感もまるで薄い氷が割れるような音になるような工夫が施してあり、薄氷というテーマをデザインにしただけではなく、菓銘にふさわしい総合的なこだわり、細やかさが、さすが日本の職人の仕事だなあと深く感銘を受けた次第である。
お茶の世界は全く無知ではありますが、
和菓子を作るには総合的な教養のようなものが必要とされ、菓子とはいえ知性と気品のような空気感を放っているように感じるのです。
食す時にも静かにゆったりとそれでいて背筋をしっかり伸ばして味わいたい、そんな気持ちにさせてくれます。
そして、日本人でよかったなあと心から思うのです。
形にするためのデザインはどこからやってくる?
外にはない。
常に自分に属した日常の中に潜んでいる。
よく目を開けて日々を過ごすことである。
そう、私が私に答えた。
ちなみにこれが私の歩いた凍った御池です。
富山県の五郎丸屋の「薄氷」。
機会がありましたら、ぜひお抹茶と共にいっぷくいかがでしょうか。