2016.02.11
バロックスタイル
このバロックパールを初めて目にしたときは、思わず声が出た。
驚いた。
大きさ。照り。肉厚でフォルムも奇麗。
裏も表もないほどに美しかった。
このボリューム感だから、一歩間違うとこんなにバランスのよい自然美という価値を、下品なランクに一気に落とし兼ねない。生かすも殺すもデザイン次第かと思うと、素材に試されているようで、形にすることにそれなりの決意が必要だった。
制作の過程で、今回のように素材に試されていると感じることは多々ある。
出したいシャープさやなめらかさ、柔らかさ、銀であるならば表現が可能であると知っているのに、それがうまくまとめられないときのもどかしさ。
力量を淡々と突き付けられる瞬間だ。
少しくらい続けてきたからと言って、慢心してはならない。
素材に叱責されているようで、厳粛な気持ちになるものだ。
首元からデコルテへと優しく包むようなラインの先端に、銀色のヘタが溶けかけて絡みついている。
大きなバロックパールがどのあたりにおさまれば、身に着けたときしっくりとくるか。
人が身に着けてこそアクセサリーだ。
着ける人ご自身よりも奇抜なデザインだけが先行したり、素材だけが前に出るようでは、私が作りたいアクセサリー観に反することになる。
その落としどころで、形になるまで一年を要したというわけだ。
バロックパールが顔と少し離れ、優しく流れるイメージの線で視線を誘導し、女性の胸元にちょうど収まるよう配したので、バロックパールの大きさが主張しすぎて、嫌みな感じが表に出ることがないように気を配ったデザインにした。つもり。
どんな方に嫁ぐのかが個人的にとても気になるアクセサリーのひとつとなりました。
それだけ気を配ったというバロックパール、いったいどのくらい大きいのか。
ものさしを眺めて想像してみてください。
縦が4センチほど、横が3センチで、厚みが2センチほどある。
ね。
思わず声が出る大きさでしょ。
バロックパールの前留めスタイルチョーカー。