2021.10.03
私流リフレッシュ
一昨日、久しぶりにロングライドに挑戦した。
未だ45キロが最高距離数だったのだが、今回はその距離数を少しでも更新することが目標だった。
爽やかな秋晴れ。
コースは大分県の耶馬溪から中津方面のメイプルサイクリングコース。
耶馬溪鉄道、通称「耶鉄」として地元の方々や観光列車として親しまれ、多くの方々を乗せて中津駅と守実温泉を往復していたこの路線が、マイカーの普及と国道の整備により廃線となったのは50年ほど前。
その廃線路をサイクリングロードへと整地し、新たな利用価値へと変身させたコースだ。
素晴らしい提案をした方がいらっしゃったものだ。
出発は旧守実温泉駅跡地。
午前8時半。
澄んだ空気とひんやりと気持ち良い風。
素晴らしい景観に囲まれたコースを清々しい気持ちで漕ぎ始める。
黄金色の稲穂と朝陽の光の柱。
かなり絵になる。
少し走ると現れた残された駅標。
ホームはこの辺りだったのだろうか、と想像してみる。
ちょうど線路幅が舗装されている。
線路はたったこれだけの幅で、多くの人を運べる乗り物を走らせていたのだ。
車は場所を取り過ぎる。車が動くことで二酸化炭素排出も深刻な問題となり、今度は電気や水素を使った車の開発が盛んだ。
複雑な気持ちになった。
多くの方々が耶馬溪鉄道事業に関わったことだろう。
その功績を残しつつ、再利用しようと提案したサステナブルな発想の提案者に拍手を送りたいと思った。
右手には山々、左手には大きな川が流れていてひたすらに素晴らしい景観に包まれたライド。
秋の紅葉シーズンには山々は色づき、沿道にはカエデが真っ赤に燃えてまるで赤いトンネルを進むような素晴らしさであろうことがうかがえた。
1時間ほど走ると中津市が運営しているサイクルセンターに着いた。
サイクルセンターのスタッフさんとしばらく雑談。
スタッフさん曰く、殆どが県外からのツーリスト客で週末や祝日は賑わうらしい。
この頃は小さなお子さんの家族も多いとか。
かわいらしいちびっ子たちがレンタサイクル試乗をしていた。
少しだけ休憩すると、次に目指したのは競秀峰の青の洞門。
ここは、川に沿ってせり出した断崖絶壁。
当時の人々は、この道を塞ぐようにしてそびえる大きな絶壁を岩の中腹辺りまで登り、鎖渡しで越えていたらしいのだが、あまりにも多くの人や馬が滑落し命を落としていたこと知った禅海和尚なる方が胸を痛めて、洞窟を掘りトンネルを作ろうと立ち上がった。
その作業は和尚率いる多くの石工たちの手掘りで掘り進められ、なんと30年かかってトンネルを貫通させたという。
貫通したトンネルを通るのに、人が4文、馬が8文、現在の通貨にすると人が70円ほどの通行料を徴収した、日本で初めての有料道路であったらしい。
この手掘りの禅海和尚の話は、菊池寛の「恩讐の彼方に」という短編小説のモデルとなっているので、ご存知の方も多いことでしょう。
今では殆どが作り替えられていますが、一部手掘りの部分が残っています。
トンネル開通にこの長さならば、今ならどれくらいの時間がかかるものなのだろう。
周囲は道路に恵まれているので、どこか中途半端な想像しかできない。
粘り強い30年事業に頭が下がった。
楽な時代になったものだ。時間が余りすぎるほどの利便さだ。
早めのランチをとると、次に向かったのは青の洞門を抜けて
大正生まれのこれまた日本一の長さを誇る8連橋、オランダ橋。
背景にそびえる山々と青い空が更に趣きに華を添えていた。
オランダ橋を眺めた後、中津方面へ向かった。
その時点で折り返しても前回の距離数を上まれることが確実になり、もう少し走って記録を伸ばすことにした。
1時間ほど走ったあたりでコーヒータイム。
計測計を見て、友人と舞い上がってしまった。
そこで既に35キロを示していた。
つまり、ここから折り返すと確実に70キロだ。
驚いた。前回の45キロより延びればよいという目標が一気に70キロ。
サイクリストたちには、語るほどのレベルじゃないのだが自分の中で前進したことが嬉しかった。
しかし、自転車は山と違い帰りがしんどいのだ。
余力が充分あると思われるタイミングで折り返すことにした。
見落とした駅標を撮影しながら再び進む。
ゴールまで残り10キロきったあたりから手の痺れや足の張りが現れた。
速度も落ちてきた。
前方を進む友人も回転がゆっくりだ。
今度は持参したフルーツで休憩とストレッチ。
そうして駐車場に着いた時、時計は16:18を示していた。
70キロ完走した!
景色に包まれ、歴史に触れ、親切な地元の方々に出会い、充実したライディングとなった。
趣味の世界でも凄い人たちはたくさんいる。
むしろ、殆どが自分より凄い人ばかり。
知れば知るだけ、気持ちも楽になり、捉え方も変化する。
それでも、出来なかったことや知らなかったことを増やすことはいくつになっても楽しいものだ。
多様化したこの時代に選択が多くあり、整備された治安のよい日本で生活できるということはとてもありがたいと思うことが多々ある。
たまにはコンビニもなく、電波も通じにくい場所に1日身を置くのも良いものです。
リフレッシュ。
今は、わざわざ自ら時間を確保し、環境を取りにいかなければいけない時代になった。
その際、出来るだけ自分の体を動かし少しきつい思いをしながら、その環境を得た方が頭の中はスッキリするように思う。
体を動かすことで頭の疲れは吹き飛ぶような気がする。
そんな体験をするのによい季節になりました。