2021.09.03
秋の息づかい
九州には1700メーター越えの山が14座あり、そのうち12座がくじゅう連山にある。
これらをいかに最短時間で全部登るか、このことをトレッカー達の間では
17サミットと呼んでいる。
私も、実は密かにゆるりとチャレンジしております。
これはそもそも皆さん12座を1日で完遂するのがスタンダードらしく、モデルルートやコースがあるわけではなく、最短で登るために天候やコンディション、自分の得意コースや体力、ペース配分を考慮しルート決めからやるものらしい。
これを友人は当日県外から車でやって来て17時間で踏破しそのまま車で帰り、翌日は出社したというから、脱帽の上に下げた頭が上がらないといった感じだ。
このことは、むしろ私に山を楽しむというスタンスを与えてくれた。
というわけで私は1日1座かせいぜい2座をこつこつとこなしている。
毎回、くじゅうに登るわけではないので、足かけ3年目に突入した。
自分の実力に合わせて地味にゆるりとやっておりますが、残り2座にリーチとなってから半年が経ってしまった。
しばらく低山ばかりでしたので、今回は少し体力試しに17サミットにはカウントできないですが1600メーター越えの平治岳にチャレンジした。
くじゅう連山でも東に位置する少しハードな山。
岳とつく山はおおよそ中級レベルとされている。
頂上に立つと毎回思う。
やっぱりくじゅうは登り甲斐もあり、どの山も山頂からの景色が本当に壮大で素晴らしい。
17サミット10座クリアした今では、登った山々を指差し確認するのも気分が良いものだ。
右手に見える3つのこぶ山は、昨年、秋に紅葉を眺めるべく登頂した三俣山。これまでの中で私にとって最強にハードな山々だった。
緑のひときわ美しい窪地は坊がつるキャンプ場と九州唯一の山小屋のあるエリア。山間にあるこの平地は、その昔、牧草地帯で放牧した牛がたくさんいたらしい。
秋にはここはススキで黄金色一色に染まる。
登山口からこのキャンプ場までも2時間近く登らなければいけないわけで、どの山に行くにもそこそこのロングトレイルである。
日帰りするならば6時間から7時間以上の総歩行となる。
なので、大半の方々はここにテントを張り宿泊し、翌朝から周りを囲む目的の山へと向かうのである。
今回登った平治岳は、往復で6時間。
途中、男池と名付けられた水の枯渇した池の上を横切りそこから足場の悪いガレ場を1時間以上、更に写真のキャンプ場からのルートとの合流ポイント大戸越から35分ほどの急登、そして更にミヤマキリシマ群生エリアの迷路のようなルートを抜けてのピーク。
男池には、よく見ると多くのトレッカーの足跡だけではなく、動物の足跡もあり、人間だけでなく時間が違えば動物たちもここを通っていると思うと少し不思議な気がした。
登山口から30分あたりの場所にかくし水という名の湧水ポイントがある。
ここの水は冷たくてとっても澄んでいて本当に美味しかった。
下山してきたときに足をつけて顔を洗いごくごく飲んだ水の美味しかったこと。
まさに生き返った心地だった。
身体中の血が入れ替わったようなさっぱり感、お風呂とは違うんだよな。
あの感覚は。
実生活では、例えようがない。
この辺りは、1日に二万トンを湧出するという日本百名水の場所であるという。
市販のミネラルウオーターもこの地下湧水から世の中に出回っているらしい。
木陰でザックを下ろして休憩すると土の上をせわしく蟻が食べ物を運んでいる。
あたりにはいろんなキノコがにょきにょきと生えている。
風が吹くたびに色づいた葉がはらはらと落ちてくる。
山には少しずつ秋が訪れている。
あらゆる気配に気持ちが安らいだ。
激しかった夏も終わる。
1日も早く穏やかに過ごせる日が来ますように。