2020.03.10
疑い深き山々
こすれ合う木々の音とこだまし合う風の音。
頭上の木々から、ぱたぱたと落ちてくる昨日の雨と今朝の朝露たち。
雲にすっぽり包まれて山の全貌は全く見えず、ほぼ地面しか見えない登山道を歩き出した早朝。
唸るような風の音は、自然の威力を示されているようで少し無口になる。
晴れの日ばかりを狙って決行しているトレッキングだが、あまりにも晴天の日が少なすぎるのでもう曇りでもいいや!そんな気分で今週も山へ。
今回は頂上あたりでうまくすれば快晴になる予定。
2度も見送った豊後富士、由布岳に挑戦。
確実な天気の時に登りたいのだが、仕事の調整が毎回うまくいくわけでもなく、且つ、天気ばかりを狙っていくには、時間が足りなさすぎる。
あと10年早く始めていれば。そんな思いもちらほら。
朝靄に包まれた山もなかなかに幻想的で素敵だった。
木々に溜まった朝露は、本当に水晶のようで美しい。
どの木もアクセサリーを付けているようにキラキラしている。
一眼レフを持ってくればよかったと思う時に限って、撮影したいものがやたらにあり、もやもやしながらスマホで記録として残す。
まだまだ経験不足である。その日のトレッキングに何を持てば自分がより楽しめるのか見極められていない。
初めての山にいく前夜は、ルート確認と安全注意で余興気分な気の回し方はできない。
レイヤリングと言われる、自分の体温調節をするウエアーの組み合わせは随分外さなくなったのだが、天気が読めたならとこの頃思う。
なかなかのキャリアのトレッカーにあちこちでお会いするのだが、雲を見てすぐ判断する。
大丈夫、あの雲は雨降らさないから!
わ。ステキ!憧れるなあ。と、目がハートになってしまう。
風の向き、気圧の変化、雲の動き、それらがおおよそ頭に入っていれば登頂開始時間や途中の時間調節で、頂上では絶景を約束できる。
場合によっては、別な山に変更することで悪天候を避けられる。
今回は、1時間半ほど外してしまい、下山間近で快晴になった。
下山後ふと振り返って仰天した。
登り始めた時には、まるで雲の中に入ってゆくような登山であったのに、青空背景に山の全貌がみるみる見えてきて頂上にかかった白い雲が西へ西へと移動していた。
すっかり雲が切れて山がどんと視界に現れた瞬間。
おお!この山に登ったのか!!
男山だ。勇ましい姿に満足感が沁み渡る。
毎回思うのだが、下山後に登った山を見上げると、本当に自分は登ったのだろうか。
私、ほんとにあの山に登ったのか?
しかも、歩いて?あんな高いぞ!
どの山でも毎回、私が帰り際に山を見上げて呟くので、友人はいつもケラケラ笑う。
もう一回登って確認してくれば?
と、再びケラケラ笑うのである。
全体を遠くから見ていると無理なような気もすることでも、足を踏み入れると気が付くとやれてしまっていたということ、結構多いんですよね、
自分にとってのこの仕事も、そんな節がある。
山を通して思う、私は、妙に疑い深くなる時があるようだ。
というわけで、三度?山の話であいすみません。