2017.01.23
初めて見るその山は、すべての憂いを静かに引き受けて取り込み、それらを裡なる原力で浄化する。
そうやって生まれた新たな清らかなる精気を、ひたすらに遠くまで降りまいているようだった。
たゆまぬリズムで、たえまなく。
どこか女性的な面持ちだが、根はどこまでも伸びやかに張った物静かな男性的な山。
その顔にはうっすらと白い雪化粧。
冬の薄青い空を背景に陽の光を浴びると、雪化粧は目を細めるほどのきらめく優しい銀色へと変化した。
女性が素直な嬉しさを無言で示す時の、頬を紅潮させるような変化にも似ていた。
白い雪が緩やかな山肌の凹凸と曲線輪郭を浮き彫りにして、銀色にきらめく。
太陽が送る惜しみない山への賛美は、光の中にオルゴールの音色をも含み奏でているようだった。
その日、その山は、ことのほか美人だった。
そのことを山は十分に分かっていた。
美しい顔立ちの山へ贈る。
マウントリング ー 銀雪 ー