2022.10.16
おおきな椅子の上の空想
週末からの個展の準備もほぼ整い、昨日は、秋の好天気を狙ってしばらくぶりのロードバイクライドに出掛けた。
前回、仕事が推して前日に取りやめた行橋方面の京筑ルートの周遊コースの42キロ。
早朝出発し、自宅から2時間近く車移動しスタートしたのは犀川の駅。
清々しい朝の空気とひんやりした秋の空気。
漕ぎ始めた途端、そうそう、この感覚。
記憶を確認し、ひとり心躍る瞬間である。
昨日は、どこを走っていてもずーっと金木犀の香りがしていました。
まるで、金木犀の香水を自分自身がつけているかのように町中どこを走ってもずっと薫ってくるのです。
この時期、通りがかりのどこかのお家の庭先から薫ってくることは誰にでも経験のあることだろうと思うのですが、40キロ以上いろんな場所を常に移動しているというのに、町のどこに居ても四六時中薫っているという経験は全く初めてで、車では得られない自転車ならではの体感だと思うと、自転車を始めてよかったと再び心躍った。
以前訪れた場所で、似たような印象深い経験をした街がある。
あれは、5月のベルリンだった。
どこを歩いてもポプラの白い綿毛が雪のようにようにふわふわと舞っているのです。電車で隣町に移動しても朝からずっと舞い続けている。
金木犀の薫りを鼻先に携えてペダルを漕ぎながら、ふとポプラの綿毛が舞うあの幻想的で美しいベルリンの街景色を思い起こしていた。
お湯を沸かして川縁の風に吹かれてコーヒーブレイクをした後、スタート地点に戻りバイクを車に乗せると、どうしても行ってみたかった場所があり車にて移動することにした。
向かったのは、豊前の繁華街から離れた丘の上に忽然とある木製のおおきな椅子。
誰が何のために?
山々を正面にしたおおきな椅子には、よく見ると後ろの左脚の部分から登れる仕組みになっている。
椅子好きな私としては、ぜひこの椅子に座ってみたいじゃないか!
いつもは登ると言えば山だが、このおおきな椅子によじ登ってみた。
思わず笑顔になる。
ついでにこんなポーズも。
一寸法師の気分。
訪れて分かったのですが、この建物三階建てほどはゆうにあろうと思われる椅子が鎮座している敷地の中には、いろんな種類のオリーブの苗が等間隔で沢山植えられていました。
敷地の入口には、手書きで「森の学校」という看板を見かけた。
沢山のオリーブの苗が大きくなった頃、このおおきな椅子を中心に森の学校ができてゆく。
素敵な計画だなあ。夢がある。
どんな方が実行されたのだろう。
お会いして色んな想いを聞いてみたくなった。
椅子に座って景色を眺めていると、前方の山々に近づく落日の光が辺りの稲穂たちを撫でるような角度で照らし、まるで黄金色の絨毯を眺めているようで、そこは地球というリビングルームであるような錯覚に陥った。
地面から足を離す。
大人になると、あまりしないことだ。
そんな場所に腰掛けて見ると、不思議と雑念が溶けてゆく。
童心が産む独特の想像力と世界。
あの頃、創り出せた忘れてしまったものたち。
そこに近づくための学校。
この学校は、大人が必要とする学校になるのかもしれない。
ぜひ、再び訪れてみたいと思った。