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2025.09.25

楽器に選ばれし演奏家たち

 

 

 

先日、個展へ向かう前日、福岡に立ち寄り暫くぶりのコンサートを楽しんだ。

 

音響設備も刷新したアクロスシンフォニーホール。

チェリストのヨーヨー・マのコンサート。

演目はバッハの無伴奏。

 

 

楽器の中でも最も憧れの強いチェロ。

バイオリンの無伴奏のコンサートはしばしばあるのだが、チェロは意外にも初めて。

ステージにポツンと一席だけ用意されている椅子を目にすると、こんなに広いホールで一人で演奏するのだと思うだけで世界で活躍されるプロとはいえ、改めて敬意がホールいっぱいに広がった。

 

ステージに現れたヨーヨー・マ氏は、かなり背が高く、抱えたチェロも弓もコンパクトに見えるほどだったが、着席するとすぐに演奏が始まった。

曲は、チャオ・ジーピンの草原の夏。

まさに広大な中国の草原を吹き渡る風のような伸びやかさで、あたかもそこに立っているかのよう。

心の中に鬱積していたおりのようものを吹きさらってしまい、清涼感がホールいっぱいに広がった。

楽器は、胡弓ではないかと思うような音だった。

インターミッションを挟んで後半は、ジョージ・クラムのチェロのためのソナタ。

この演奏は、凄まじかった。

最近まで存命だったというアメリカの作曲家の初期の重要作品だそうで、今ではこの曲を演奏しないプロのチェリストはいないというほどの定番だそう。

全体的にはジャズテイストだが、楽器を越える程の演奏後はあちこちからのため息がひとつの静かなざわめきとなりホールをいっぱいにした。

 

今回の演奏で特に驚いたのは、ひとつの音を驚くほどに消え入るようにフェードアウトさせて、尚且つ音を確実に出し続ける。

この演奏は、聴いている者の呼吸を止めてしまうほどの小さな小さな音で、弦から弓が離れた直後は、ごくんと息を飲み込む音がホールにいっぱいに広がるような気迫があった。

 

 

 

いろんなものがホールに広がったコンサート。

 

巨匠は恐ろしい。

恐ろしいほどの才能。

楽器に選ばれた音楽家というものは、存在するのですね。

 

来月は、スペインADDA交響楽団と村治香織のコンサートで、再びアクロスシンフォニーホールへ。

秋は、目白押し。

 

 

 

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