2019.04.17
手元にキリッと感。
ルーフリング。
オニキスとシルバーのコントラストが、装いや手の持っているイメージなどを、さらっと方向転換してくれるリングです。
このリングが生まれたのは建築家ルイス・カーンの言葉に出会ったことがきっかけだった。
最初はカーネリアンという赤茶色の天然石とオニキスの2色展開で作ったが、やはりデザインと銀の素材の持つイメージとのバランスを考慮すると、圧倒的にオニキスの方がしっくりきたので、現在はオニキスに絞って制作している。
言葉というものは不思議なもので、既に伝えたり話されたことであっても、受け手と語り手に程度の組違いが起こり、リアルタイムで伝わらないまま時間が流れたり、話が変化したまま着地して終息したりする。
どんなに分かり合っているはずの仲でも多々あることだ。
それでも、過去に聞いた話の断片がある瞬間に包まれるようにしてふわっと、もしくは、電撃的に回路が繋がりばちばちばちっと点灯して、理解できる時がある。
他人にしてみれば、ありきたりな言葉でも自分にとって時機がかみ合えば、座右の銘程の文言になったりする。
しかしながら、言葉の重みというものはたとえ同じ言葉であっても誰がその言葉を言うのか。
そのことはとても大きいと思う。
聞き手の心構えが左右しているのかもしれない。
生きるということは、表現することである。
今から20年ほど前。
当時の私を奮い立たせてくれた建築家ルイス・カーンの言葉だった。
息子が制作したドキュメンタリー映画の中で語られていたが、ユダヤ人であったルイス・カーンの死後、国籍部分を自身で黒く塗りつぶされたパスポートが見つかったという。
背負うものの大小はあろうとも、人にはダークな部分があるからこそ深みを表現できるのではないか、そしてそれを理解できるのも人が持ち合わせているダークな部分がキャッチする故ではないか。
あの頃の情熱を失わないように。
自分を鼓舞したく、もう一度作ってみた。