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2025.09.28

女子、一生の探しもの

 

 

女の人ってさあ、なんで幾つも幾つもポーチとかバッグを買うの?

ひとつあればいいじゃん。

若い頃、男子に言われたことがあった。

いやいや、要るのよ!

ちょうどいいサイズ感のポーチに関しては、女に生まれてこのかたずーっと探し続けています。

見つけた!と思って連れて帰り、いざ持ち歩くものを詰め始めると、あれ、これまで入れたらキツキツだあ。

とか、入るけどなんか取り出しにくいなあ。

とか、このポーチ自体が重いのでは?

とか、諸々。

とにかく、あー、すっきり!

 

というわけにいかず、少しのもやもや感を残したままバッグに詰めて持ち歩く。何年かしたらまた、新参者がやってくる。

そうやって、半世紀ですよ。

深いですねえ。

たかがポーチ。されどポーチ。

 

 

 

よし!

持ち歩くもののパターンを決めてそれに合わせた形のポーチを作ろう。

 

バッグが変わると、ポーチも変わるわけで。

尚且つ、年齢のせいかもう重たい革のバッグも持つ頻度が減り、その代わりスマホという重たい代物が財布以上に幅をきかせた必需品になった。

とにかくなんでも極力軽くしたい。

けれども昨今は、初夏から初秋の現在、一年のうち半年は水を持ち歩かないとぶっ倒れそうになる。加えて若い時は持ち歩かなかった目薬や老眼鏡、そのようなものが必要になったりするわけで。

やっぱり、おばさまは荷物が増えるのよね。

結局、仕事の時、オフの時、近所にお出かけの時、車移動の時、サイクリングの時、いやはや、持つものが本当に常に変化します。

この問題、どうするよ?

というわけで、まずは必須の持ち物を分類して小分けしてみる。

それらを紙の上に置いて、何種類くらいのどれくらいの大きさがよいか考えていたらふわっと浮かんできて出来上がると、桜島みたいな形の変形ポーチ。

これが案外取り出しやすく良さげ。

一気にスイッチが入ってしまいまして、分類小分けの変形ポーチがあれこれできちゃいました。

多分、これでまた暫く使いながら、新参者を横目で探すことになるのだろうなあ。

 

悩ましいったらありゃしない。

女は、身支度という小さなわくわくの選択を楽しめる生き物なのですよ。

と、あの頃の男子に言いたい!

 

 

2025.09.25

楽器に選ばれし演奏家たち

 

 

 

先日、個展へ向かう前日、福岡に立ち寄り暫くぶりのコンサートを楽しんだ。

 

音響設備も刷新したアクロスシンフォニーホール。

チェリストのヨーヨー・マのコンサート。

演目はバッハの無伴奏。

 

 

楽器の中でも最も憧れの強いチェロ。

バイオリンの無伴奏のコンサートはしばしばあるのだが、チェロは意外にも初めて。

ステージにポツンと一席だけ用意されている椅子を目にすると、こんなに広いホールで一人で演奏するのだと思うだけで世界で活躍されるプロとはいえ、改めて敬意がホールいっぱいに広がった。

 

ステージに現れたヨーヨー・マ氏は、かなり背が高く、抱えたチェロも弓もコンパクトに見えるほどだったが、着席するとすぐに演奏が始まった。

曲は、チャオ・ジーピンの草原の夏。

まさに広大な中国の草原を吹き渡る風のような伸びやかさで、あたかもそこに立っているかのよう。

心の中に鬱積していたおりのようものを吹きさらってしまい、清涼感がホールいっぱいに広がった。

楽器は、胡弓ではないかと思うような音だった。

インターミッションを挟んで後半は、ジョージ・クラムのチェロのためのソナタ。

この演奏は、凄まじかった。

最近まで存命だったというアメリカの作曲家の初期の重要作品だそうで、今ではこの曲を演奏しないプロのチェリストはいないというほどの定番だそう。

全体的にはジャズテイストだが、楽器を越える程の演奏後はあちこちからのため息がひとつの静かなざわめきとなりホールをいっぱいにした。

 

今回の演奏で特に驚いたのは、ひとつの音を驚くほどに消え入るようにフェードアウトさせて、尚且つ音を確実に出し続ける。

この演奏は、聴いている者の呼吸を止めてしまうほどの小さな小さな音で、弦から弓が離れた直後は、ごくんと息を飲み込む音がホールにいっぱいに広がるような気迫があった。

 

 

 

いろんなものがホールに広がったコンサート。

 

巨匠は恐ろしい。

恐ろしいほどの才能。

楽器に選ばれた音楽家というものは、存在するのですね。

 

来月は、スペインADDA交響楽団と村治香織のコンサートで、再びアクロスシンフォニーホールへ。

秋は、目白押し。

 

 

 

2025.09.22

山口県個展の様子!!

 

 

 

山口展より昨夜、深夜に戻りました!

 

今回も充実した3日間でした。

毎日、皆様の元気な笑顔に会えたこと、瀬戸内の穏やかな景色、美味しいご飯、仕事を超えた次元の喜びを得られる本当に楽しい滞在時間でした。

 

振り返ると15年間ものおつきあいになりましたドゥログリーイケオカさんでの個展。

衣食住をテーマにした住宅街の中にあるセレクトショップは、お店作りも常に新しい空気が満ちていて、アップデートが続いているその感性にいつも感心させられます。

内装も粋で新鮮な発想で、毎年伺うのが楽しみ。

個展だというのに、合間を見て気になる服を試着したり、生活用品を物色したり、お鍋の使い方を伺ったり、カフェの美味しいスイーツを頂いたりと、なんだか仕事とオフがぎゅっと詰まった3日間なのです。

 

 

 

会期は始まったばかりです。

26日まで。

秋の気温になって参りました、ぜひ、お運びくださいませ。

 

利用する新幹線は徳山駅。

徳山には工場地帯があり、帰りはこの夜景が見える側の席をいつも確保!

 

 

そして、在来線は、レトロチックな電車が走っています。

童謡の作詞家でもあるまどみちおさんは、山口県生まれでもあるので、在来線が到着するとまどみちおさん作詞のゾウさんのワンフレーズが流れます。

そして必ず心の中で続きを歌っています!

 

 

長州と薩摩。

やはり歴史的ルーツも含めて、自分にとって前世からご縁があったのかも!

なんて思う次第です。

 

さあ、これからオーダーを制作しながら来月の愛知展の準備を進めて参ります!!

 

あれ、展示してる写真撮り忘れてる…

 

 

 

2025.09.07

言葉集め

 

 

本や映画、誰かとの会話の中で出会う揺さぶられる言葉たち。

それらを集めて書き写している手帳がある。

 

 

思えば、これは癖のようなもので中学生の頃からやっているように思う。

走り書きできるノートに一旦書いて、溜まってきたら手帳に清書する。

そして、ついでに読み返す。

 

家族で一番字が下手というコンプレックスを持つ私は、家族で一番字が上手い父に、いつかピックアップした言葉たちを墨文字でピシッと書いてもらおう。

そんなことを漠然と考え続けていた。

数年前に父が入院することがあり、幸いにして後遺症もなく今も元気に過ごしているのだが、そろそろお願いしなければ…と手帳を段ボールに詰めて鹿児島へ越してきて一年が経った。

念願だった床の間のある暮らしは想像していたより気に入っている。

床の間の天井に仕込んだ高演色のダウンライトに照らされた花や絵を、ぼんやり眺めるだけでも心の中に独特の静寂が広がってゆく。

字を頼むとなると、掛け軸か。

茶道も華道も馴染みがなく、掛け軸と自分の暮らしはどうにもバランスが取れない違和感のようなものを感じていて、あまり積極的に探していなかった。

 

 

そうだ!

短冊ならば、父にも気負わずにたくさん書いてもらえる。

おまけにどんどん好きな言葉を気軽に差し替えられる。

ようやく本腰入れて探し始めたが、短冊のサイズの掛け軸はあるがなかなかしっくりくるものがない。

今年の春、全く別な探し物の折、偶然、京都のギャラリーで見つけることができた。

 

神代楡と好きなウエンジの木を使い、源氏香の組香図より花散里の意匠という。

これですね!内側からの声が聞こえた。

若い頃、調香師の方の本を読み、香道に組香という遊びがありその組香図が実際に京都の老舗お香のお店で見れると知り、出張の際に時間をとって見に行ったことがあった。

加えて、

木には希少な埋もれ木というものがあるということを知ったのも、ちょうど同じ頃で、この仕事を始めた駆け出しの頃だった。

初めて大きなイベントに出展した時にお隣のブースに出展されていた神奈川県の木工作家の方が、神代杉を使って作品を作られていて、長い間土の中で化石化されて埋もれていた木の時空を思うと、そこはかとない浪漫をひっそりと感じたものだった。

そして、昨年、山口県の個展に毎回来てくださるお客様が、神代杉の茶托をよかったらディスプレイにと下さった。

おそらく神代杉を見たことがないだろうと思われていたようで、私が口にした埋もれ木の言葉を耳にされた途端、お客様も嬉々とされ一気に話が盛り上がった。

 

 

 

 

そんな時間を超えたいろいろが繋がり、一気に惹かれた短冊掛け。

字も書いて貰いようやく身辺も落ち着き、掛ける場所も本日決定した。

 

差し替え候補の言葉たちを父が元気なうちに沢山書いてもらおうと、読書しながら、せっせと言葉集めをしているのです。

 

日本語にはとても美しい言葉があり、文字そのものも文句なしに美しい。

特にひらがなは絶妙だ。

言い回しの美しい言葉や、音の綺麗な言葉、五感にダイレクトに届く言葉。

現実的には言葉はある程度の数さえ知っていれば生活はしてゆける。

けれども、使う言葉が変わるとそこに清涼な空気を漂わせることができる。

それは、ひとつの技術といえるのではないだろうか。

とはいえその逆もあるわけで、出てしまった言葉が相手の奥深くに一旦届いてしまうと取り消せない、とかく扱いが難しいのが言葉の正体でもある。

なるべくならば出会った良き言葉たちを使うことで、心身共に新鮮な空気に包まれたいと思う。

 

言葉が埋もれてしまわないように。

埋もれ木を素材に選んだこの短冊掛けを作った木工作家のメッセージが、そこに濃縮されているような気がしてならない。

 

 

 

2025.09.07

個展のお知らせ!!

 

まだ残暑が厳しいですが、秋の個展活動スタートです!

 

毎年お世話になっております山口県は広島に程近い光市での個展です。

 

 

会場となるのはドゥログリーイケオカさんの店内になります。

DMをドゥログリーさんは一昨年から制作せずにSNSの配信案内のみとなっておりますので、あらかじめご了承くださいませ。

 

私は初日、2日目、終日在店致します!

 

今回は、活動30周年記念に制作した「銀の身支度」の販売も行います!

この本を制作につなげてくださったのは、ドゥログリーさんのオーナーのおかげです。

準備にあしかけ3年、今思い起こせば想定外に動いた活動拠点の引っ越しと重なり、想定外の個展依頼が増えたり、荷造りしたりと、そんなタイミングによく仕上げたなあと…

でも、願いは、叶うものなのだなと実感しております。

 

制作準備もあと4点ほどになりました。

たっくさん新作持って参ります!

オシャレ好きな皆様に元気にお会いできるのを楽しみにしております!

 

 

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