2025.02.20
床の間の木蓮
床の間と玄関の死角になるコーナーには、季節の花を大きな花器に活けるようにしている。
この2箇所には、天井から真下に照らすように高演色のダウンライトを仕込んでもらった。
照明は、インテリアの最後の仕上げと言われていて、どこを照らしどれくらいの明るさにするかで、劇的に空間が立ち上がってくる。
若い頃によく行っていたお気に入りのバーに営業前の明るい時間帯に立ち寄らせて頂く用事があったのだが、店内に入るとそれまで行き慣れた空間とは全く別な場所に思えて、場所を間違えたかと入り口の看板を確認しに戻ったほどだった。
明るさでこんなにイメージが違って見えるのか。
その体験は、強烈な衝撃だったのを今でも覚えている。
照明効果は絶大だ。
のちにあちこち訪れた異国でも、灯りの使い方が空間を盛り上げてくれることを学んだ。
フランスは特に照明が少ないところが多く、メニューを見るのもやっとで、トイレに行くのも段差に気づかず転びそうになったり。
かのバカラミュージアムは、外はピーカンだというのに館内に足を踏み入れた途端ショットバー並みの暗さ。
それゆえに自ずとゆっくり歩く、その目線の先にインスタレーションのようにディスプレイされたバカラの歴史あるガラスたち、それはもうめまいがするほど際立っていた。
ある程度の暗さになると、気持ちがリリースされる。
LED電球も随分と進化したとはいえ、やはりかつての電球の色の方が雰囲気はあるような気がする。もう、販売も終了するとか。
話が逸れたが、床の間に活けていた綿毛のようなガクに包まれていた蕾が、気がつくと花開いていた。
白い抽象画の前で静かに咲いた木蓮。
木蓮は圧倒的に白の方が好みだ。
春のお日様の光を包みとるように咲く木蓮も良いが、ライトを浴びて、艶っぽさを放つ木蓮も、また良き。
春よ、来い。
はやく、来い。