2017.09.02
山口個展のご案内はひとつ戻ってね!
無花果。
漢字を見ていると、花の咲かない実なのだろうかと思ってしまうが、我々が食べているいちじくは、実は花の部分であるらしい。
無花果は大人の果実だ。
若い頃にはあまり好んで食したいとは思わなかった。
でも、当時から憧れの大人の女性たちは、無花果が好きだとよく耳にしていたので、季節になるとちら見して果物売り場を素通りしていた。
果物たるもの、滴り落ちるような果汁がなければ。
そんな風に思っていたのかもしれない。
自分そのものが、青い果実だった。
皮は薄く必要以上に触っていると痛みやすい、食すと決めたときにふわっと握り、さっとナイフを入れる。
中から深い秋色の抽象画が現れる。
自己主張の過ぎないほんのりした香り、器をまとったときのサマ、舌触りと甘さのバランス。
他の果物にはなかなかないバランスだ。
今は、そんな風に思う。
どんなに遠いところにあなたはいるの、果実よ。
わたしはあなたの心のなかにひそんでいます、花よ。
インドの詩人、タゴールの詩より
ああ、秋だなあ。
どうかこのまま、おとなしく秋に突入してほしいものだ。