2017.03.10
おとなの雛祭り
昨日をもちまして無事に熊本個展が終了いたしました。
ギャラリーさんからお電話頂き、最終日ぎりぎりの時間までお客様がおみえになり、お客様方も喜んで下さっていたし私自身もとても楽しかった、という感想のお言葉を聞きながら、作り手冥利につきる喜びをかみしめた次第でした。
お会いできたお客様、すれ違いましたお客様、全てに心より感謝申し上げます。
さてさて。
我が家に飾られている、陶雛。
昨年の秋、入り口の頃。
個展で上京した折、親しくしている作家さんと東京の合羽橋をぶらぶらして、あんみつを食べて浅草寺を30年ぶりに訪れた。
若い頃は感じなかったが、江戸の香りが少し残っているこの界隈にこそ東京の良さを感じる、次回は寄席を楽しんで江戸前寿司を楽しみたいものだ。
そんな話をしながらゆらゆらと歩いていたら、ふと思い出したように聞かれた。
お雛様って持ってる?
年甲斐もなくって思うかもだけど、島根の陶芸家のお雛様なんだけどこれがなかなか渋いのよ。
きっとあなたの好みだと思う。
お部屋にも合うんじゃないかな。
よかったら、貰ってくれない?
私には娘はいないし、自分もモノを作る仕事してるから作家さんのものだと思うとなかなか捨てられないのよね。
昨年の秋入り口、そうやって我が家にやってきたのが、この陶雛。
もしも私がこの陶雛に早くに出会ったならば、迷わず買っただろうと思うほど見事にストライクゾーンの私好みだった。
早く飾りたい!!と頂いた作家さんに興奮気味にお礼の電話をしていたら、実は急いで送ったのにはワケがあると話してくださった。
旧暦の9月9日は、重陽の節句というものがあり菊を愛でる節句としては知られているけど、梅雨と夏を越して仕舞われているお雛様を虫干し兼ねてまた出して飾りましょう。
そんな、後の雛という節句でもあるという。
長寿と健康を願う、別名「おとなのひな祭り」と言われているらしい。
知らなかった。
日本の行事、祝日の意味も、よそさまの国の行事に派手に押されて印象が薄くなるどころか、存在さえ知らないという有様。
そういえば幼い頃に家庭にひとつはあった日めくり暦の中には、その日にまつわる多くの情報が書かれてあったように思う。
私が仕事で関わっているギャラリーのオーナーさんが、いつか話していた。
必ず大安の日から個展を開催するように日にち設定をするのだけれども、それを知ることができるカレンダーがこの頃少ない。と。
私も世に出ると疑いようのないおとなではありますが、母国の事もよく知らない無知なおとなとしてこの日本に長年生きております。
年長者とのお付き合いは、そんな自分にはとても刺激的です。
この場を借りまして、改めましてお礼を申し上げたいと思います。
そして、
変わらず渋かわいい姿で、現在2度目のお披露目中です。
日本人の大切にしてきた風情、風流、慣習。
季節のしつらえ。
なかなかによいものです。