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2025.10.18

愛知の個展の案内はひとつ戻ってね!

 

 

今朝も暑い。

駅には、暑さを避けた階段の辺りに多くの方が立って待っていた。

 

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ベンチには日がさすのもありガラ空きだ。

いつから電車を待っているのだろうか高齢の男性が、まっすぐ正面を見据えて、リュックを腰のあたりに下ろして、杖を椅子の横にかけていた。

突然、ホームに金属音が鳴り響いた。

何の音だろうとあたりを見回していると、私の右向かいに座っていらした男性が高齢の男性に大きな声で話しかけた。

「お父さん!鍵が落ちましたよ!」

「ああ、こりゃどうも。助かりました!」

ほんとだ、よかったよかった。鍵をどこで落としたわからないとなるとパニックになるよなあ。

 

しばらくすると高齢の男性のポケットからガラケーの呼び出し音が鳴った。電話に出ると切れた模様。しばらくするとまた呼び出し音が鳴った。

電話に出るとまた切れた模様。

お節介だが少し様子が気になり始めた。

もしかしたら、詐欺電話じゃないだろうか。

 

男性は、ゆっくりとリュックを背負い、杖を頼りに立ち上がって、ホームへと移動する準備を始めた。

かつては長さがちょうどよかったのだろうが、今はズボンの裾が長すぎて地面につき、靴で踏みがながら歩き始めた。転びやしないだろうか。

なんとなく、気になり後を追った。

再び電話が鳴り、出ると切れた。

男性は、ボタンをいじりながらどこかへ電話をかけ始めた。

「電話したか?今、ホームに居る。慌てなくていいから、国分で降りるから」

詐欺ではなかったと安堵しているとちょうど電車が到着した。

電車に乗り込むのを後ろから見届けようとゆっくり近づいて気づいたのだが、ホームと電車の間が思ったよりスペースがある。

杖を電車の中に体より先に固定させるには、手を意識して上げなければならない。

おそらくご自宅の暮らしの中ではあまり使わない手足の上げ下げが、電車に乗るために必要とされるようで時間を要していた。

 

何かあればサポートするつもりで、いつもよりのろのろと電車に乗り込むことにした。

そんな私の気配に気付いたようで、

「ああ、すみませんねえ」

私に向けた笑顔の中の両目が随分と白く見受けられ、驚いた。

白内障だろうか。見えているだろうか、きっと不便だろう。

 

なんだか胸がじんとなった。

近い未来、我が父もこうなるのだろう。

それが老いというものだ。

付き添いもなく、四つ先の駅まで向かう行くこと。

高齢者の時間の流れは、我々の時間の流れとは違う。

 

遠くに離れて住む子供達は、電話でいくら頻繁に話していても、日常の暮らしがどの程度、時間がかかるようになるかを実感しにくい。

世代にもよるが、子供に迷惑をかけたくないとよく耳にする。

親が自発的に自分のペースで行う生活を選んでいるのであれば、何も問題ないのだが、こうも世の中が変化している時代を生きている高齢者は、かつてとは違い、いろいろな不安やできない、分からないがかなり多くあるのだと思う。

自分ですら、分からないだらけなのだから。

 

高齢の男性に、未来の父を見るようだった。

拠点を移したことは、よかったかもしれない。

流れゆく桜島の景色を見ながら思った。

 

スーパーでも高齢者の男性がお惣菜コーナーで物色しているのを見かけるときも、似たような気持ちになる。

 

誰の身にもいつか来る姿。

核家族の個人主義の生き方、男女平等、女性の社会進出、求めて手にした生活は真の幸福だったのだろうかとふと思うのである。

 

 

 

 

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