2020.10.22
とっておきの毎朝
長く住んだ街から隣街に引っ越してきて1ヶ月が過ぎた。
越してすぐに個展を抱えていたので、家の中のこと、仕事のこと、生活に関わること、全てが同時進行の方向転換。
身辺はとてもバタついていたが、ようやく無事に個展を終えて気持ちも落ち着き、気がつくと季節も味わい深い候になってきた。
住む場所や環境が変化すると、こんなにも物事が違って見えるものなのかとしばしば思う。
以前住んでいた場所でも、毎朝起きると部屋中の窓を開け放ち空を見ながら生まれたての今日の空気を部屋に取り込んでいた、
日課だったことを以前と同じような時間に起きて、場所が変わった今の住まいでもやっている。
先日、素敵な朝焼けを見ることができた。
冷たい朝の空気が心地よく身体と脳を目覚めさせてくれる。
バルコニーの手すりにもたれかかりながら、しばらく刻々と空の色が変化するのを味わった。
以前と変わらず同じことをやっているのに、見える景色が違うとこんなにも気持ちがゆったりするものなのか。
以前住んでいた場所とさほど遠くないのに、全く別な都市にいるかのようだ。
夕陽が見えるのもよいが朝陽が見えるのもなかなかによい。
そのどちらかを楽しめる。
そんな方角に建っているお家は多いと思うのだが、越してきた我が家はこの時期には朝陽が昇ってくる姿も夕陽が落ち入る姿も両方、どちらも見えるということに住んでみて気付いた。
朝の空気は本当に気持ち良い。
先日の山口個展の滞在先でも、ホテルの近辺を早朝散歩してみた。
瀬戸内の陸のように凪ぎた海と空の雲。
まるで8ミリ映写機で撮影したような美しい空と海に、身体と心がかっちりと繋がり、隅々まで朝の空気が沁み渡り、入れ替わってゆくような気持ちになった。
1日を早くスタートさせると、本当に気分がよい。
静かで、清潔で、無が身体中を満たすあの瞬間は、自由と希望を溢れ出さんばかりに感じられる。
今日はとっておきの1日になる。
する!
だって今から始められるのだから。
毎日、そう感じられる朝。
今日と違う明日の朝はどんな空なのだろう。
とっておきの毎朝を感じるために、いつものように早めに灯りを消して休むのです。