2019.01.30
何をか奏でる
楽器が弾けたならどんなによいだろう。
もう30年近く思い続けている。
よし、今年は挑戦してみよう!
好きな曲を一曲弾けるようになればいいんだから、せっかくなら弾いてみたい楽器にしよう。
弦楽器だ。
新しいことを始めるのにベストな年初めにあれこれとリサーチをしたのは、ちょうど1年前の1月のことだった。
一生かかって、一曲でもよいから弾けるようになればいい。
楽器はチェロかバイオリンが憧れ。
しかし、正しい音を出すまでが果てしなく難しいという事実は、8年習っているというお客様から聞いたことがあった。
それらは、とりあえず棚の高〜い部分に置いたとして、調べれば調べるほどそれ以外の部分で断念する理由が、自分にとってはあまりにも多かった。
楽器購入は、噂どうりなかなかに気合のいる金額だ。
最初は、教室の貸し出しを利用させて頂くとして。
まずは、教室。
福岡の街の規模では、立地条件の合いそうな教室は思った以上にそう多くはなく、
おまけに大人はきっぱりとお断り、初心者もご遠慮な所があり、選択肢は狭まる。
教室候補があらかた定まったとして、何においても練習は必須。
毎日しましょう、初心者は特に。
どこで?
マンション住いの方は、クレームになるので練習用にサイレントバイオリンのオススメ、若しくは消音機を楽器につけて練習しましょうとある。
楽器メーカーがアップしていたサイレントバイオリンでの演奏動画を拝見。
動画を見ながら、習い始めた方々のレビューを読み漁った中で気になる事が書いてあったことが頭の中を占め始めた。
ひどい肩こりや頭痛に悩まされるという。
それは、まずい。
仕事で肩こりや頭痛があまりにもひどく、ジョギングやジム、あれこれやった末にたどり着いたピラティスやヨガ。
それを5年続けてきた今、漸く激痛の間隔がロングスパンになりつつある。
仕事も趣味も肩こり頭痛要因だなんて、本末転倒だ。
夢に膨らんだ情熱の炎はみるみる灯火と化し、動画を見終わる頃には完全に消火され、煙さえも確認したような気がした。
弦楽器は、全くの未経験者にはあまりにも敷居が高すぎた。
そんな経緯をかつてピアノをやっていた友人に話したところ、ウクレレが一番入りやすいよ。
持ち運べるし、練習もできるし。
楽器の値段も手頃だし。
なんだかあなたがウクレレ持ってる姿、めっちゃおもろいわ!
と、にやにやして私を見る。
ウクレレかあ。
アロハシャツを着たドリフターズの高木ブーがちらつき、語尾が下がる私。
あ!それかクラシックギターがいいんじゃない?!
今度は真面目な顔ぶりの友人。
!お!
いいねぇ!
広陵としたスペインの丘の上のオリーブの木の下で、遠くモロッコからの風に黒髪のストレートヘアーをたなびかせて、物憂気にギターを弾く誰かの姿がちらついた。
これ、誰?
とにかくステキ!
よし!また教室探してみる!
と、鼻息荒く自宅に帰って再び検索。
そして、教室を検索していたはずなのに、なぜかクラシックギターの巨匠、セゴビアのCDアルバムをアマゾンで購入し、すっかり満足して1年が経ってしまった。
楽器を習い始めるまでにこんなにも時間がかかるものなのだろうか。
ネットなんかであれこれ検索しなきゃよかったか?
挙句、まんまとネットでお買い物しちゃって、完全に振り回された感。
ネットの出現で疑似体験満足する人が増え、従来の経済の動きと全く違う動きが出てきたとよく耳にする、私はそれを体現したのか?
小さい頃に情操教育の一環として、何かしらの楽器をお稽古事でせめて習っておきたかった。
画像は、先月遊びに来た東京の友人の趣味というウクレレ。
どこに行くにも持ち歩いているらしい。
ショートボブの彼女がウクレレを奏でる姿は、とても可愛らしかった。
どこにもドリフターズの影はなかった。
楽器と彼女自身に違和感がなく、マッチングしていて心地よさそうに弾く様を見ながら、いつの日か私もマッチングした楽器で心地よく何をか奏でたい。
そんなことを思ってしまう諦めの悪い私に再会してしまったのであった…。