2018.11.26
浮かび上がる光の中で
明るき時には、隅々まで見渡せる光を。
暗き時には、不便のない、程よい明るさで。
灯りは頭で思うより大切であるように思う。
ある頃まで、暗くなったら何も考えずに決まりごとのように電気をつけていた。
しかし、異国へ旅をしながら、どの街も街全体や生活の中に適度な明るさというものが溶け込んでいることに気づき始めた。
本来、夜につける照明とは昼の太陽に近いくらい明るくするためのものではなく、もっと時間の過ごし方、共に過ごす相手によって灯りを使い分けるためのもの。
このさじ加減で、心身共に心地よくいられる。
そのために存在しているのかもしれない。
夜に通っているヨガのクラスでも、講師は1時間のクラスの中で少しずつ照明の明るさを変化させてゆく。
たったそれだけで、筋肉が少し頑張ったり、緩みリラックスしたり。
明るさは心だけでなく身体にも与える影響は確かだ。
異国の街やホテルのロビー、旅先でふっと沸き起こるあの独特の心地よさ。
あれ。
そう、この感覚。
いつか体験したものだ。
記憶を辿ろうとしばし逡巡する。
度々そう感じていたものは、その土地に感じていたのではなく、自分の身体感覚が求めているものと正しく噛み合った瞬間であったのではないのかとこの頃思う。
自分の目や脳が求める安らぎの明るさ。
それは身体にも直結している。
テレビを持たない生活を始めて10年くらいだろうか。
パソコンやタブレットも夜に見る事が随分と減った。
苛立つ、腹立つという感情の逆立ちが、私の中から以前より遠ざかったような気がするのは、年齢故のことではないように思っている。
空間にあるものたちがふわっと浮かび上がる光の中で、心の静寂とバランスを保つ。
夜は、自分にとってそんな時間帯であるよう明るさを意識し、生活を変えた。
聴き入る音楽。
文字を追う読書。
愉しむ食事。
全てが深く味わえるようになった。
それは、私にとって思いがけないほどの効果をもたらせてくれた。
インテリアを変える前に、明るさを見直してみること、これはとてもよいことだと思う。
人の心にも身体にも。