2018.06.11
青い風
梅雨の晴れ間。
この時期の風はどことなく冷たさがある。
身体を通り抜けて心に届くとき、きゅっと音が鳴る。
日々夏へと向かうのでこの風を感じる日はとても少ない。
若い頃には感じ得なかったが、きゅっと音が聞こえるようになってからとても好きになった。
秋にも似たような風があるが、私には違う音に聞こえる。
早朝ヨガクラスを受けたあと大通りへ出ると、街路樹がシャラシャラと唄い心地よい疲れの身体をかすめてゆく。
青い風。
梅の季節だなあ。
そんなことを思いながら横断歩道を渡り、老舗和菓子屋の前を通ったら翡翠のような青梅の和菓子がひときわ目を引き、思わず立ち止まり気がつくと財布を取り出していた。
帰宅すると、家中の窓を開け放つ。
外で感じる青い風は家の中では感じにくいけれども、空気が流れてゆく気配は気持ちまでもが浄化されるようだ。
梅雨の晴れ間の貴重な時間。
青梅の色と形があまりにもきれいなので、早々に食べるのがなんだかためらわれ、思わず写真を撮った。
いっぷく。
ほどなく余韻に浸っていると、インターホンが鳴った。
友人からの贈り物。
箱を開けると、こぶりだけどぷりぷりっに元気な青梅だった。
青梅頂いたのでおすそ分け。私は梅シロップを作りました。
青梅の香りに包まれた友人の一筆箋。
食器棚の上の果実酒コーナーの保存瓶たちを見上げる。
保存瓶がひとつ遊んでいるのを確認すると、ジンで青梅酒を仕込んだ。
果実酒瓶の陳列している様は、なかなかに気分よい。
そして、ふたたびいっぷく。
今度は、メールの新着音が鳴った。
開くと、別な友人からのメールだった。
主人の実家の梅がたくさんなったので、今年も梅をブランデーで漬け込みます。去年あげたやつお口にあったならまた送るよ。
偶然は重なるものだ。
青梅大集合な一日だった。
きゅっと青い風。
梅雨の晴れ間の爽風。
こんな貴重な1日があるから、まとわりつくような湿気の時期も趣ある季節になるものである。