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2016.03.29 /

 

 

ブレスレットの季節がやってきた。

 

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私は、一年中着まわせるカーディガンが好きだ。

袖丈が七分丈のものは、とても便利で色違いで何着か持っている。

正確に言うと、好きというよりは憧れ続けているのかもしれない。

 

 

若い頃、ホテルのロビーを待ち合わせ場所によく選択していた。

ホテルのロビーという空間が持っている独特の空気感が好きだったというのもあるが、自宅にはおけそうにもないゆったりとした素敵な椅子が何脚もあり、照明も落ち着いた明るさで、何より素敵な装いに身を包んだ見知らぬ人々を眺めていると退屈しなかったからだ。

あれはどこのホテルだっただろうか、体に合った品のいいシンプルなラインのワンピースに、糸の細い上質な生成り色のカーディガンをはおった女性が、宿泊者専用のエレベーターからロビーへとゆっくりと歩いて来られた。

特別な色を着ていたわけではなかったのだが、私にとって女性はロビーでひときわ目立っていた。

私の斜め前に女性が腰かけると、ふわっと素敵な香りがした。

 

女性はしばらくするとカーディガンの袖口を少しめくり腕時計の針を確認すると、バッグの中から本を取り出し、しおりの挟まったページをさっと開きさらさらと文字を追い始めた。

 

まだケータイ電話も普及していない時代だった。

 

待ち合わせの時間を過ぎたのだろうか。

 

ページをめくるたびに袖口からこぼれ出てくるブレスレットが素敵だった。

どんな人と待ち合わせしているのだろう。

 

誰も知り合いのいない空間で、誰かを静かに待つ仕草は、雑誌を切り抜いたかのように見えた。

 

素敵な大人の女性だった。

 

カーディガンなんて、つまらない。そう思っていたが、カーディガンの似合うあんな女性になりたい。

女性を盗み見ながら、強くそう思った。

 

 

オーソドックスな装いは、自分の素がそのまま表れるので、とてもこわい装いでもある。

自分をごまかせない。

 

人間はある程度の年齢になると、心の中や頭の中、日常が顔つきや雰囲気ににじみ出てしまう。

40過ぎたら、自分の顔に責任を持て。

そんな言葉がある。

 

当時はよく意味が分からなかったが、今はよく理解できる。

 

 

ごまかしの効かない年齢。

ここからが、ファッションを真に楽しむことができるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

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