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2017.07.25

桁違いな世界との遭遇

 

 

 

写真は、独特の匂い、空気を流しながらそこで生き続けているような気がする。

 

ベルリンを旅したときのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ベルリンには、写真家たちが作品を発表する場が多く、写真だけのギャラリーもたくさんあるらしい。

滞在中に、世界的にも有名な日本人写真家がベルリンのグッゲンハイム美術館でちょうど展示をやっているのを知った。

著名であっても日本ではなかなかお目にかかれない写真家、なるほど仕事の舞台は世界なのかと納得した。

 

宿泊したホテルのすぐ近くに、ヨーロッパでも、写真家たちの憧れの写真専門のギャラリーがあったので、行ってみることにした。

大きな鉄の扉のサイドにギャラリー名の書いたブザーがあり、鳴らすと施錠が外される音がした。

奥へ進むと、砂利の敷き詰められた広い中庭があり、街中にいる喧騒は一気に消され、中庭のど真ん中にそびえ立つ見事なプラタナスの木陰の下にはテーブルと椅子が何脚か置いてあった。

ヨーロッパのギャラリーや美術館は、程よいアプローチが必ずとってある。

 

ギャラリーまでのこのゆったりとした間が確保できるのが、個人的にとても好きだ。

 

ガラス張りのエントランス。

 

展示は3階まであった。

一階にはとてつもなく大きな写真が数枚で、技術的なもののアピールなのだろう、私には難解だった。

階をあがると少しずつサイズが現実的になっていった。

特に、3階に展示してあった写真は、どれも美しかった。

うっとりするような光や、触れそうな質感が出ている水面、モノクロともカラーとも判別つかない色調。

素晴らしかった。

クリスチャンディオールがショウのために作った大きなツバの帽子を被る女性。

スーパーモデルがくしゃくしゃに笑った素顔。

亡きダイアナ妃のはにかみながら正装した姿。

 

ふと気がつくと展示写真のフレームの下に、赤い丸いシールが幾つも貼ってあるのを発見。

よく見ると値段が表示してあった。

あれ、このフロアーのものは全部売り物なのだ。

 

この写真は?

換算してみる。

も一度換算してみる。

!!!!!

フロアー入り口に戻ることにした。

 

いささか悪趣味であるとは思ったが、ちょうどフロアーには私しか居ないし、まあ、よいか。

電卓出すわけでもないし、と自分に言い訳しながらシールの数と金額、ザクッと暗算してまわった。

 

 

絶句。

凄すぎる。

 

会期は1ヶ月。

今日は、ちょうど始まって一週間足らず。

 

 

優れたアーティストたちは、やはり求める人が多く集まるところを舞台にするのか。

アーティストたちが集まるから、求める人が寄るのか。

 

なんとも、自分とはかけ離れた世界を知った瞬間だった。

 

自分とかけ離れた世界に遭遇できるのは、日常を離れた時に多い。

桁違いな才能と桁違いな市場があるという現実を知ったこと自体が、妙に嬉しかった。

頭の中に新しい領域を得たような気がしたからだ。

 

画像は、私の寝室に飾った自分で撮影した旅の写真たち。

 

世界中には、人の数だけ現実というものがある。

 

いろんなレンズを使い、ファインダー越しに眺めることで自分以外の人間の現実が見えてくる。

自分の現実以外は、すべて非現実であり、仮想。

その非現実と仮想を現実に生きる人たちが、数多いるのだ。

世の中は、実に面白い。

 

あの日、私は異国で新しいレンズを手に入れた。

 

 

 

 

 

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